長時間労働で適応障害 大阪地裁が市などに教員への賠償命じる

長時間労働で適応障害 大阪地裁が市などに教員への賠償命じる
iStock.com/fizkes
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 長時間労働により適応障害やうつ病を発症して休職を余儀なくされたとして、大阪府東大阪市立中学校に勤務していた男性教員が、府と市に330万円の損害賠償を求めて起こした裁判で、大阪地裁は8月9日、校長に注意義務違反があったなどとして府と市に220万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 訴えによると、男性は2019年度から同中学校に勤務し、21年度は理科の授業を週20時間担当したほか、学年主任や進路指導主事などに加えて野球部の顧問も担当していた。こうした中で同9月下旬ごろから無気力感や食欲不振などに悩まされ、校長に2度にわたり「授業の担当時間数を減らすか、進路指導主事を外してほしい」などと相談したが具体的支援策はなく、11月に適応障害と診断、22年7月にはうつ病と診断され、休職を余儀なくされることになった。

 男性が発症する直前のひと月当たりの時間外勤務は、約92時間から173時間に上り、発病と公務との因果関係は疑いようがなく、校長が安全配慮義務を怠ったとして責任を追及していた。

 大阪地裁は判決で、男性の発症前の時間外勤務時間は月136~155時間に上り、量的に著しく過重であった上、質的にも負荷が増加していたと指摘。業務量を減らしてほしいとの要望を伝えられても、校長が具体的な措置を取っていなかったとして、「原告に疲労や心理的負荷が過度に蓄積し、心身の健康を損なうことがないようにすべき職務上の注意義務に違反したと認められる」との判断を示した。

 また、発症と校長の注意義務違反には相当因果関係が認められるとして、大阪府と東大阪市に220万円の賠償を命じた。

 この判決について、原告代理人の松丸正弁護士は「教育現場でも教員の長時間労働と心身の不調に責任があるという当たり前の判断が定着したといえる。学校現場では長時間勤務に見合った健康管理が立ち遅れていたが、働き方改革の改善や教育環境の整備を後押しすることになるのではないか」と話している。

 一方、判決を受けて東大阪市教委は「判決文の内容を精査しているが、教職員の長時間勤務については大きな課題と認識しており、取り組みを進めてきたが、ますます業務の整理や効率化を進めていく必要があると考えている」とコメントしている。

 大阪府教委は「判決を精査中で現段階ではコメントできない」としている。

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