学校現場の最前線で教育・学びの未来をつくるリーダーらが対話する「教育長・校長プラットフォーム」の第2回関西本部の会合が、京都府の同志社大学を会場にこのほど開催され、関西圏を中心とした教育長や校長、教員ら160人以上が参加した。キーノートスピーチでは、文化庁の合田哲雄次長が登壇し、次期学習指導要領の改訂などについて参加者と共に語り合った。
「転機の教育」をテーマに講演した合田次長は、自身が担当した2008年と17年の学習指導要領の改訂について「知識の体系である学習指導要領を資質・能力の体系に転換したいと思っていたが、08年の改訂ではゆとり教育批判と闘いながらそこまで組み立てることは難しかった。それを17年改訂の時に行えたことは良かったが、構造が複雑になったために学校現場に届いていないという声もあり、そこは私が負わなければいけないところだと思っている」と述べた。
一方で「特に高校における探究的な学びの進展は予想以上だった」と話し、「高校では総合的な探究の時間だけではなく、教科と重ね合わせて探究をしていく。大学入試が変わりつつあることや、デジタル化も影響していると思うが、手応えは感じている」と語った。
次期学習指導要領の改訂に向けて「今は次の改訂に向けてちょうど土台をつくっている時期。土台が一度できてしまうと、あとは指導内容をどう組み立てていくかという具体論になっていくので、土台を変えることは難しくなる。だから、今がすごく大事な時期だ」と強調した上で、「子どもたちはGIGAスクール構想によって、1人1台端末を持っている。大事なのは自分の学びを自分で組み立てることができるツールだということ。デジタル化の波の中での学習指導要領の構造化が進められていく」と話した。
加えて「情報端末を生かして、それぞれの興味関心や特性に応じてわがままに学びを重ねることができるからこそ、他者の関心や特性への敬意が不可欠だ。小さな社会である学校において、学びや体験を通して共生の作法を共有することは、社会の土台となる」とデジタル化における公教育の重要性を述べた。
また、参加者からのカリキュラムオーバーロードへの質問に対し、「カリキュラムオーバーロードの問題は、学習指導要領の問題であると同時に、教科書の在り方の問題であり、その教科書をどう使うかという問題でもある。日本の学校教育では、教科書の最初のページから終わりまで、全てを授業時間中に教えなければいけないという構造になっている。そうではなく、探究的な学びをした子どもたちが『教科書って便利だな』と思ってくれるのが一番いいのではないか。正しいことを書いてあって、前後を見たら体系的に理解できる。学習内容の精選をしていく中で、教科書がどう変わるか、その教科書を学校でどう使うか。『こういう学びをしていくことが大事だよね』と先生方が腹落ちしているかどうかにかかってくる」と話した。
会の後半では、幼児教育や探究学習、学校安全など、さまざまなテーマで分科会が行われた。京都府宮津市立宮津中学校の由利敬亮教諭は、「キャリア教育の視点で考える総合的な学習の時間と課題解決型学習の可能性」をテーマに講演。由利教諭はPBLに取り組む良さとして「人と相談しないとできない。子どもたちの振り返りでは、友人だけでなく、家族に相談したという子も多くいた。また、生徒たちはPBLにおいて、教科書を隅々まで見て考えている。加えて、教科を越えて教員がつながれることも大きなメリットだ」と話した。
参加者らはグループで感想などを話し合い、「PBLをやるには、子どもたちがやりがいを感じられるような仕掛けをつくる、学びたくなる場の設定が重要」「PBLなど新しいことを取り入れるには、組織づくりが重要。同僚にどう働き掛けたらいいのか。早く職場に行きたくなった」などといった声が上がっていた。