民間企業と地方自治体の連携を進め、400以上の自治体の事業を支援している公民連携推進機構はこのほど、「公民連携モデル事業」として、これから1年間、新たな取り組みを進める全国5つの自治体と共に同事業の記者発表会を都内で開き、各自治体の取り組みを説明した。
教育関係では、▽奈良県宇陀市の「他地域との交流による探究心学習推進」▽山梨県大月市の「生成AIを活用した学習推進支援計画」▽栃木県益子町の「AIロボットを町内全小学校で導入」――といった取り組みが紹介された。
宇陀市は、市職員50人を自治体DXのプロ人材として育成、派遣を通して全国他地域との交流を進める一方、教育分野では8月に益子町、那智勝浦町、埼玉県狭山市、京都府城陽市、福岡市、沖縄県豊見城市の6地域の教育委員会と連携し、パワースポット見学、最先端デジタル学習を組み合わせた2泊3日の校外学習促進事業を同機構と共催する。宇陀市内には神話に関わる八咫烏神社、龍穴神社といったパワースポットが数々ある一方、最先端ARスポーツの全国大会を開いたところ100人以上の中高生、大学生が参加した実績がある。同市の山本裕樹政策監は「広く浅くよりも若手職員の提案でDXのプロを育成することとし、公民連携推進機構の支援を実のあるものとして進めたい」と意気込みを示した。
大月市は、「地域全体が生成AIを日本で最も活用する」という目標を掲げ、自治体・教育機関の業務効率化を図る。教育分野では、教師の負担なくデジタル教育を推進するとして、同機構との連携で最先端クリエーターの講師派遣を受けるなど生成AIを活用した学習を推進していく。小林信保市長は「生成AIの可能性を感じた。ただ、生成AIにもいろいろあり、専門家のアドバイスを得ないと遠回りしてしまう。民間のノウハウを活用したい」と強調した。
益子町は、ミクシィ(東京都渋谷区)が開発した会話AIロボット「Romi」(ロミィ)100台の寄付を受け、町内の小学校4校に20台ずつと公共施設や中学校、教育支援センター「つばさ教室」などに配備する。小学5、6年生の総合的な学習の時間を中心に活用していく方針。9月頃に体験会を開いた上、25年度の事業として展開。ミクシィからの派遣講師によるプログラミング授業も予定している。広田茂十郎町長は「子どもたちが地域の魅力をプログラミングし、観光案内につなげるふるさと教育のほか、福祉分野などさまざまな可能性を探っていく」と話す。
事業発表後、各自治体は公民連携推進機構や支援企業と包括連携協定を締結した。同機構は地方自治体と民間企業の連携で地域活性化を支援する一般社団法人で、内閣府や経済産業省との連携のもと、23年に設立された。約80社の民間企業が会員として参加。今回は初の包括連携協定の締結となり、5自治体を継続支援しながら、今後も多くの自治体と協定を結んで支援を広げていく方針。同機構の高瀬亜富(あとむ)代表理事は「今後も地方を元気にし、そこから日本を元気にしたいという熱い思いを持った会員企業と自治体を結ぶ、ハブとしての役割を果たしていきたい」と述べた。