米国のスポーツ界で選手を励ます言葉掛けとして始まった「ペップトーク」を活用して授業を行うペップティーチャーの授業実践報告会「ペップティーチャーアワード」がこのほど、東京都内の会場とオンラインのハイブリッドで開催された。主催は日本ペップトーク普及協会。現地とオンラインを合わせて約200人が参加し、7人のファイナリストから静岡県沼津市公立小学校の八重島希美教諭の実践が大賞に選ばれた。
ペップトークの基礎知識を学び、ペップワークシートを使ってペップトークのスキルを活用した授業を展開する「ペップティーチャー」は、現在、全国で約600人が認定されている。ペップティーチャーをつくった思いについて、同協会教育普及部副部長で香里ヌヴェール学院小学校(大阪府寝屋川市)の乾倫子教諭は「子どもの頃、勉強も苦手、走っても遅い、何もできない自分が唯一できると思ったのが、人を励ますことだった。人を励ますことができる先生が増えたらと思い、ペップティーチャーをスタートさせた」と語った。
この日は「ペップティーチャーアワード」授業実践報告にエントリーした中から選ばれた7人のファイナリストが、ペップ授業による子どもたちや自分自身の変化などについてプレゼンした。全てのプレゼンを聞いた参加者による投票で、大賞には沼津市公立小で特別支援学級を担当する八重島教諭が選ばれた。
八重島教諭は日々、特別支援学級の子どもたちと関わる中で、自己肯定感の低さからか、前向きに課題と向き合えない難しさを感じてきたという。そこで、八重島教諭は子どもたちのうまくいかない思いを「モンスター」にすることで、楽しみながら課題に向き合えるようなストーリー性のあるペップ授業に取り組んだ。
授業では、モンスター研究者としてパペット人形の「パンダ博士」が登場。例えば「発表するときにドキドキしてしまってうまく話せない」という悩みに対し、子どもたちはパンダ博士と一緒に「どき次郎」というモンスター名を付けたり、そのモンスターが取り付いてしまった子に掛けるペップトークを考えたりする活動に取り組んだ。
八重島教諭は「この授業を通して、子どもたちが自分たちの課題を受け入れ、どんどん前向きになっていった。そして気付いたら先生たちもどんどん楽しくなっていくことを感じた。これからも子どもたちと一緒に楽しく、心温め合って成長していきたい」と笑顔で話した。
また、優秀賞には大阪市公立小学校の兼松朋子教諭と名古屋市公立小学校の平山諒子養護教諭が選ばれた。兼松教諭は6年生を対象に絵本『ちくちくとふわふわ』(CHICORA BOOKS)を使ったペップ授業を報告。子どもたちからは「言葉を変えるだけで、すごくペップになることが分かった」といった振り返りがあったそうだ。
平山養護教諭は「ほけんだより」で保護者向けに4コマ漫画でペップトークを紹介したり、全校掲示板で児童に向けてペップトークについての問題を掲示したりするなどの活動を報告。「授業ではできないけれども、養護教諭としてこれからも教職員、子どもたち、保護者にペップトークを広めていきたい」と力を込めた。
同協会では来年も8月に同アワードを開催予定としている。