教育改革に取り組む小中学校の教員リーダー育成を目指した「ミライティーチャーズアカデミー」のトップリーダーコースの成果発表会がこのほど、東京都内で開かれ、6チームに分かれた教員ら受講生が1年以上に及ぶ研修の成果を発表した。子どもの個性と自律を重視する授業の進め方や自由進度学習といった、学校現場での実践事例などが報告された。
「ミライティーチャーズアカデミー」は30~40代の小中学校教員を対象としたソニー教育財団によるプログラムで、2021年から1年半実施した「トップリーダー育成研修会」の第2期として名称を変更した。23年6月から1年2カ月、講座受講や実践研修、発表会などに全国から応募した24人の教員が参加し、教員4人とソニーグループを中心とした民間企業関係者のサポーターを含めたチームを編成。
「子どもたちが2050年に自分らしく生きられるように、あなたたちは何をしますか?」を全体テーマとし、今の教え子が30~40代になったときを意識して、何を大切にして学んでもらうかを考えてテーマ設定と現場での課題解決に取り組む研修を実施した。
オンラインの特別講演を受講しながら現状認識、課題抽出にほぼ半年かけてチームの個別テーマを決定。研修の進め方として、製品完成前の試作品製作や事業を小さく動かしながら仮説検証するプロトタイピング、スモールスタートといった民間企業の手法も取り入れており、全国各地に分散する各チームの受講者はオンラインも活用しながら課題解決の取り組み、実践活動の検証を続けてきた。
各チームは「先生」の呼称を避けてニックネームで呼び合い、成果発表会はプレゼン30分、質疑応答10分で、6チームが順次登壇。加熱すると全て気体となって消える炭酸アンモニウムの実験を通して、生徒のアイデア力や情報収集力、発信力など、自分や他の生徒の強みに気付いてもらう中学校教員チームや、児童に自身の性格や得意、不得意なことを数値化してグラフにする「凸(とつ)チャート」を作成させる小学校教員チームなど、子どもたちの個性や自己肯定感を育む取り組みが報告された。
また、「成長チャンス」プロジェクトをテーマにしたチームは、児童の自己肯定感を高めるために「失敗を恐れない」という捉え方から「失敗ではなく、成長チャンス」の概念にたどり着いたと強調。授業中に「分からない」と言いやすい環境や「間違えても大丈夫」というクラスの環境づくりのため、毎週クラス会議を開いたり、挑戦ノートを書かせたりするそれぞれの教員の取り組みを紹介した。
児童の学習意欲、達成感、自信につながるとして自由進度学習に取り組んだチームでは、必要に迫られて取り組みが進んだ学校や、初めて導入して次々と壁にぶつかった教員の体験が説明された。
また、「自律・尊重・創造に向かう学校をつくり広げる」をテーマにしたチームでは、学校運営権や変革に対する拒絶といった問題に直面し、職員室のホワイトボードやICTを活用した自校内での仲間づくり、少しずつの変化を許容できる環境づくりといった問題解決への道筋を示すとともに、校長や教育委員会の後押しが強い推進力になるといった実感にも言及があった。
6チームの発表後は、参加者が各チームのメンバーと対話できる時間も設けられた。各チームはこの日の発表会での提言を今後も現場で実践させ、フォローアップしていく仕組みとなっている。同プログラムのコーディネーターで、教育関連イベントを手掛けるミライプラス代表の小林誠司さんは「プログラムでの急造チームにもかかわらず、各チーム一丸となって力を合わせて成果を出す姿が見られた。研修だけでなく、通常の学校での業務や授業でも、子どもたちのために、なぜ、それが必要なのかということを常に意識してもらいたい」と話してした。