2026年度以降の部活動の地域移行を見据え、スポーツ庁と文化庁の「地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議」は8月23日、文部科学省内で初会合を開き、部活動の地域移行の現状や論点を確認した。座長にはアサヒグループホールディングス取締役会長の小路明善氏が就任。地域移行後の運営体制や費用負担、指導者の質・量の確保といった論点をもとに、委員を務める各界の有識者が意見を出し合った。会合では、先行して地域移行を進める自治体から「空いた時間を授業準備など教員本来の業務に充てることができた」との声が挙がった一方、人口減少が進む中では「指導者や移動手段の確保が難しい」などと地方の厳しい実情を伝える声も相次いだ。
意見交換に先立ち盛山正仁文科相は「23年度から25年度までを改革推進期間と定め、地域の実情に応じた部活動の連携、地域移行の取り組みの支援を行ってきた。今後も子どもたちが継続的にスポーツや文化・芸術に親しむ機会を確保することは重要」と述べ、26年度以降の方針策定に向け実りある議論を求めた。
実行会議では主な論点として、「指導者の量・質の確保」「地域クラブ活動の運営のあり方」「財政基盤の整備」「安全確保の体制づくり」といった課題について、委員各自の立場から活発に意見が出された。
指導者の質の問題に対し、スポーツ法学を専門とする栗山陽一郎弁護士は「実際に暴力やハラスメントが起きたときにどう対応すればいいか、例えば通報制度を施策に盛り込むことが重要。事故が起きた場合に責任の主体はどこにあるのかという、ガバナンスの体制整備も求められる」と指摘した。
財政基盤の整備については、とりわけ人口の少ない地方自治体からの懸念が相次いだ。
実証事業に参加し地域移行を行う香川県東かがわ市の上村一郎市長は「実証事業の期間を終えると市の負担が増え、結果として保護者負担が1人当たり4倍近くにまで増えてしまう。支援の在り方について、国は一定の方針を示してほしい」と話した。
県として市町村教育委員会が進める地域移行を支援してきた、新潟県教委の佐野哲郎教育長は「小規模自治体の場合、地域移行しても少人数になり、一人当たりの負担が大都市に比べ増えてしまう。それを県としてどうフォローするのか課題になっている。小規模な自治体と大規模な自治体とで、県内で格差が発生する恐れもある」と危惧した。
これら有識者による議論は、来春をめどにまとめる見込み。次回は11月を予定している。