中教審は8月27日、第139回総会を文部科学省で開き、教師の処遇改善や学校における働き方改革のさらなる加速化などを盛り込んだ、質の高い教師確保のための環境整備に関する総合的な方策についての答申を取りまとめ、荒瀬克己会長から盛山正仁文科相に手渡した。答申を受け取った盛山文科相は「施策の実現に向けて、文科省を挙げて最大限取り組みたい」と今後の予算確保や法改正に向けた意欲を示した。
総会では、中教審の「質の高い教師の確保特別部会」(部会長・貞廣斎子千葉大学副学長・教育学部教授)がまとめた「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」の答申案が示された。
答申案では、教職調整額の10%以上の引き上げをはじめとする教師の処遇改善や学校の働き方改革のさらなる加速化、学校の指導運営体制の充実を3本柱に一体的に推進する方策などが盛り込まれた。さらに最終案の段階で「全ての子供たちへのよりよい教育の実現を目指した、学校における『働きやすさ』と『働きがい』の両立に向けて」という副題がつけられた。
答申案の概要が説明された後、答申案をまとめた貞廣部会長は、ベースとなる考えが副題に込められていると述べた上で、「これからが本番と考えている。制度ができても実際に駆動するかどうかは関わりのある全ての当事者にかかっており、万能薬はない。学校関係者だけでなく、社会全ての方の力添えをいただきたい」と強調した。
これを踏まえて各委員が意見を述べた。渡辺弘司委員(日本学校保健会副会長・日本医師会常任理事)は答申案を評価した上で、「教師の業務負担は学校内だけでなく、部活や保護者対応など地域と連携する課題が多くあり、地域と協力して改善を図る必要がある。文科省は広く国民への広報・啓発に積極的に努めてほしい。また、教師に時間的余裕をもたらすために、学習指導要領についても再検討してほしいと思う」と述べた。
戸ヶ﨑勤委員(埼玉県戸田市教育長)は「『審議のまとめ』の内容が教育委員会や学校現場にはまだまだ届いていない状況があり、答申の神髄を学校現場が腹落ちして実践につながるよう戦略的広報にしっかり取り組む必要がある。今回の答申が歴史的転換となる答申となることを期待しており、政府全体で予算や法制上の措置を行い、不退転の決意で改革の断行に取り組んでほしい」と要望した。
荒瀬会長はこうした意見を引き取って、「今後の展開に向けた工夫や応援に向けた意見をたくさんいただいた。教師が元気でしっかり仕事に専念できるようにと心から願って答申を渡したい」と述べて、盛山文科相に答申を渡した。
盛山文科相は「教師の働き方を取り巻く環境をどう改善できるかは、今の政府に突き付けられた重大なテーマであると考えている。今回の答申には国会の法改正や処遇改善で予算措置が含まれていることを踏まえ、施策の実現に向けて文科省を挙げて最大限取り組んでいきたい」と述べ、答申に沿って予算の確保などに努める姿勢を示した。