能登半島地震の際、現地の支援ニーズの把握に手間取ったことを教訓に、文部科学省は大規模災害の発生時に迅速に同省職員や全国の教職員を派遣するための「被災地学び支援派遣等枠組み」(D-EST)の構築に向けて検討を進め、8月27日、中間まとめを公表した。被災地からの要請を待たず、職員の派遣や教職員派遣に向けた調整を始めることなどを盛り込んでいる。盛山正仁文科相は同日の閣議後会見で、「迅速かつ機動的に被災地の学びを支援できるよう、教職員等の派遣のスキームの整理など必要な取り組みをしっかり進めたい」と述べた。
今年1月の能登半島地震を巡っては、避難所開設や教職員の被災で学校再開が遅れる中、同省はニーズ把握に向けて延べ603人(6月28日まで)の職員を派遣したのをはじめ、教職員不足に対応するため全国の都道府県教委などに要請して応援教職員など延べ290人(1月26日~3月22日)を派遣した。さらに兵庫県や熊本県など5県が学校支援チームを派遣し、避難所の運営などをサポートして学校の早期再開を支援した。
しかし、被災地の状況やニーズの把握に時間を要するなど課題も浮き彫りとなった。こうした教訓も踏まえて同省は、学校支援チームを派遣した自治体との連携を強化するとともに、大規模災害時により機動的で効果的な支援をする必要があるとして、広域的な枠組みづくりに向けた検討を進めてきた。
中間まとめでは、①文科省職員の被災地派遣②被災地外から被災地への学校支援チームの派遣③同省の調整で被災地外から被災地への応援教職員やスクールカウンセラーの派遣――の3つを柱にして、関係省庁や団体と意見交換しながら具体的な取り組みを検討する方針を示している。
このうち①については、発生後に速やかに現地の支援ニーズを把握するために応急危険度判定をする技術者も含めて、被災地からの要請を待たずに被災都道府県教委への職員派遣に着手する方針を示している。②については、同省と学校支援チームを組織する自治体との間でネットワークを構築して活動の高度化を図るとともに、横展開して他の自治体でも学校支援チームの設置を促すことを打ち出している。
③は、大規模災害時は教職員も被災して現地が混乱して要請が遅れる可能性があることを踏まえ、要請を待たずに教職員派遣に向けて調整を始めるのを検討することにしている。そのため平時から災害時に派遣できる候補者名簿の作成を各都道府県に依頼することも検討する。スクールカウンセラーについても、要請を待たずに派遣調整に着手することを検討するとしている。
盛山文科相は会見で、「引き続き能登半島地震からの復旧復興を全力で支援するとともに、今後の大規模災害に備え、より迅速かつ機動的に被災地の学びを支援できるよう、関係機関や各自治体とも協力しながら必要な取り組みをしっかり進めたい」と述べた。
同省は今後、学校現場に派遣された教職員の指揮命令系統の在り方や活動に伴う費用負担の在り方、国の支援の在り方などについて関係省庁などと協議を重ね、12月中をめどに最終まとめを示すことにしている。