中教審答申は「不十分」「問題だらけ」 各教職員組合が見解

中教審答申は「不十分」「問題だらけ」 各教職員組合が見解
記者会見する日教組の山木書記長(中央)=撮影:山田博史
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 中教審がまとめた教職調整額の10%以上の引き上げをはじめとする、教師の処遇改善や学校における働き方改革の加速化などを盛り込んだ答申について、日本教職員組合(日教組)と全日本教職員組合中央執行委員会(全教)教職員組合が8月28、29日に文部科学省で相次いで記者会見を開き、それぞれの見解を発表した。

日教組 業務削減に向けた対応が不十分

 28日に記者会見した日教組の山木正博書記長は、処遇改善については一定の評価をしつつも、長時間労働や業務削減に向けた対応が不十分との見解を示した。「教職調整額のアップが示されているが、方法としては課題があり、本来は人材確保法の趣旨に基づいて基本給で処遇すべきだ。しかし、日教組として求めてきた処遇改善については一定評価し、しっかり対応してほしいと考えている」と述べ、まず来年度の教育予算をしっかり増やすことを国に求めたいと強調した。

 一方で働き方改革に関しては、「しっかりと人の配置や業務削減をすべきだ。本来業務でほぼ勤務時間が埋まっている実態を考えると、部活動の地域移行や標準授業時数の見直しなどが不可欠で、業務削減に関わる部分などが十分に盛り込まれなかったことには不満が残る」と述べた。

 これを踏まえて、会見に同席した薄田綾子政策局(労働政策)次長は「処遇改善と長時間労働是正は別に考えてほしい。このままでは処遇改善を図られても長時間労働は変わらない可能性がある。3年後程度をめどに勤務時間の実態調査をして、進捗(しんちょく)状況を検討して軌道修正していくことを強く求めたい」と強調した。

全教 危機的状況打開されず「問題だらけ」

記者会見する全教の檀原書記長(左)=撮影:山田博史
記者会見する全教の檀原書記長(左)=撮影:山田博史

 全教の檀原毅也書記長は29日に記者会見し、「教師を取り巻く状況が危機的状況にあるとの問題意識を共有して期待していたが、これでは危機的状況は打開されず、むしろ深刻な危機を招きかねないと現場では怒りが渦巻いている」と指摘し、「問題だらけ」との認識を示した。

 具体的な問題点としては3つを挙げ、まず教職員定数増について「加配定数の改善にとどめ、基礎定数改善は検討課題とされたことが残念」と指摘、「安定した正規職員の確保につながらず、ますます臨時・非常勤教職員が足りなくなる」と懸念を示した。

 また、教職調整額を支給する給特法の仕組みを維持し、長時間労働の歯止めとなる残業代支給の仕組みを否定しているとした上で、「時間外在校等時間を将来は20時間にすると掲げているが、どのように縮減されているか示していないことも問題だ」と指摘した。さらに「新たな職」の創設や学級担任手当の導入などについて、「学校の中に先生の序列化、階層化を進めるもので、教職員の共同に有害な働きをすると思う」と強調した。

 その上で檀原書記長は「処遇改善というなら、きちんと予算をつけて全ての教職員に一律に行われることが必要だ。全国の教職員や保護者などと共に、答申の具体化を許さない行動を広げたい」と述べた。

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