教員団体から教育委員会事務局への教員の昇任などに関する推薦名簿や金品の授受が問題となっていた名古屋市教育委員会は、これらが昇任への口利きや付け届けにつながっているという不正の構図はなく、個人よりも組織としての問題が大きいとする調査検証チームの最終報告を、8月28日に公表した。再発防止策として、慣例化していた推薦名簿や金品の授受などから決別し、教育委員会事務局の組織改革を進めていく必要性を提言した。
この問題は今年2月に、名古屋市教育委員会教職員課で、校長会や各教科の研究会、同じ大学や高校の出身者による同窓会などの団体から、校長、教頭、教務主任への推薦候補者のリストを受け取っており、そのうちの一部の団体からは、商品券などの金品を受け取っていたことが発覚したもの。市教委では大学教員や弁護士で構成される調査検証チームを立ち上げ、関係者へのヒアリングなどを行ってきた。3月に取りまとめられた中間報告では、記録が残っている2017年以降、問題が発覚した23年度までに総額で1300万円を超える金品を受け取っており、23年度には86団体が推薦名簿を提出していたことが明らかとなった。
最終報告では、その後の調査を踏まえ、改めて推薦名簿や金品の授受によって、人事が不正にゆがめられた事実は確認されなかったと結論付けた。その上で、この問題は教育委員会の人事権が長年にわたりないがしろにされ、それに対し市教委自身も無自覚かつ無責任であったと言える点で、職員個人の問題よりもはるかに重大な問題をはらんでいると指摘。再発防止策として、推薦名簿や金品の授受などからの決別をはじめ、教員出身者と行政職員をバランスよく配置し、協働していく組織体制の構築、人事制度の見直しなどを提言した。
市教委では、再発防止策について検討し、予算などが伴うものについては、来年度以降、できるところから改善していくとしている。