自民党教育・人材力強化調査会の大学国際化・留学促進プロジェクトチーム(PT)の猪口邦子座長らが9月3日、文部科学省を訪れ、国際的に活躍する人材育成に向けて若者の海外留学拡大などを国家戦略として強力に推進することを盛り込んだ提言を盛山正仁文科相に渡した。提言では、就学前年齢以降の子どもたちがネーティブスピーカーに接する機会を整備して英語力を養うなど、初等中等教育段階から国際人材の育成に着手することを提案している。
同党のPTがまとめた提言では、食料・エネルギーなど国内外で課題が山積する中、世界に打って出る人材の育成が急務とし、意欲ある若者への留学機会提供は社会に新たな価値を生み出す人材の育成につながるとした上で、「こうした人材育成は、初等中等教育段階から着手し、裾野を広げていくことが重要である」と指摘している。また、コロナ禍で停滞した海外への留学生派遣の回復が進まない背景として、語学力や就職活動への不安や留学費用の負担感などがあるとして、こうした課題に対応する取り組みが不可欠だと強調している。
その上で具体的な5項目の取り組みを提言している。まず、意欲ある若者の留学機会の確保のため、海外留学のための給付型奨学金の単価・対象人数増加など予算拡充を図るとともに、官民協働で留学を支援する「トビタテ!留学JAPAN」の抜本的な拡充策の検討や、大学に対して留学を含む国際経験の必修化を推奨することなどを盛り込んでいる。
また、全国の大学にいる外国語を母語とする教員を地域の学校に派遣して、家庭の所得によらず、就学前年齢以降の子どもたちがネーティブスピーカーに接する環境を整備し、次世代の多言語対応力を得る取り組みの推進を求めている。初等中等教育段階からAIを活用した英語教育も取り入れ、実践的で高い水準の英語力を養うことを推進するよう提案している。
さらに海外の大学との交換留学強化に向けて国際業務に精通する大学職員の育成や、留学生の往来拡大のために在外公館と政府系機関との連携を推進して、海外での基盤強化を図ることも求めている。
盛山文科相との面会の後、猪口座長らは取材に応じ、初等中等教育段階からの英語教育強化に関して、「地域で活躍する国公立大学の外国人の教授などに、例えばボランティアのような形で保育園や小学校低学年の教室に行ってもらうことで、全ての子どもがネーティブスピーカーに接することができる。また、中学レベルで短期間でも留学経験を持つことで自信もつき、英語をきちんと学ぼうというきっかけにもなる。こうしたことを総合的にプロセスとして奨励する必要がある」と強調した。
また、同党教育・人材力強化調査会会長の柴山昌彦衆院議員は「予算のこともあるが、しっかり行ってほしいのは、国としての連携強化と体制整備だ。以前にもグローバル人材の育成について提言しているが、さらに深掘り、スピードアップするため上乗せの提言をした。取り組みの推進には省庁横断に加えて経済界のサポートも必要であり、ぜひ文科相に中心となって後押ししてほしいと申し入れた」と述べた。