子どもの「体験格差」解消へ NPOと企業の連携強化探る

子どもの「体験格差」解消へ NPOと企業の連携強化探る
子どもの体験格差解消の取り組み事例が発表されたセミナー=撮影:山田博史
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 経済的な環境などで子どもが得られる体験に格差が生じる「体験格差」の解消に向けて、NPO法人と企業がより連携を深めて取り組むことを目指すセミナーが9月2日、東京都内で開かれた。実際に子どもたちの体験格差の解消に取り組んでいるNPO法人代表や企業の担当者が参加し、具体的な事例の成果などを報告した。

 このセミナーは、プログラミング教育の推進などに取り組むNPO法人「みんなのコード」が主催し、社会課題の解決に取り組んでいる約50の企業やNPO法人が参加した。セミナーでは、子どもの貧困問題や「体験格差」解消に向けて取り組んでいるNPO法人代表と企業の担当者から、それぞれの取り組みの内容や成果が報告された。

  認定NPO法人「Learning for All」代表理事の李炯植(り・ひょんしぎ)さんは、子どもの貧困解決をミッションに10年にわたって学習支援や居場所づくりなどに取り組んできた活動内容を紹介した。世帯年収の差で子どもの学校外の体験に大きな差が生じているという民間の調査結果も示しながら、NPOとしての取り組み内容を発表した。この中で李さんは、毎年100社以上の企業とさまざまな形で連携し、寄付を生かした旅行体験や職場体験などの研修、クリスマスイベントなどのボランティア活動と、さまざまな形で子どもの体験づくりを進めている事例を紹介した。その上で「楽しいだけでなく、子どもの世界が一歩一歩広がる体験や学びを重ねている。それでもまだ課題の大きさに比べて供給力が少ないので、さらに企業への働き掛けを続けていきたい」と述べた。

 三井住友フィナンシャルグループの大萱亮子さんは、同グループとして昨年10月に社会的価値創造推進部を新設し、社会課題解決の取り組みに力を入れていることに触れた上で、貧困格差の解消や教育機会、体験機会の提供に取り組んでいることを紹介した。NPOとの連携では、公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン」が経済的困難を抱える子どもたちに学習や体験活動で使えるスタディクーポンを提供する事業に3年間で3億円を拠出しているほか、社員が出向して仕事上のスキルも生かしながら直接活動をサポートしていることも報告した。大萱さんは「いい実績が生まれており、新たに支店跡地を活用して子どもたちがさまざまな体験をできる居場所づくりも進めている」と、さらに活動の幅を広げたいとの思いを語った。

 「みんなのコード」代表理事の利根川裕太さんは、さまざまな企業などと協働して毎年100万人以上の子どもたちにテクノロジー教育の機会を提供している活動を紹介するとともに、子どもたちが創造的な活動に取り組めるよう全国で展開している居場所づくりの成果に触れた。この施設では、不登校だった生徒が学級委員長になったり、積極的に課外活動に参加するようになったりと、子どもたちが成長している様子も紹介し、「マイナスをゼロにするだけでなくデジタルの力でプラスの領域にできている」と強調した。

 その上で「あらゆる技術は放っておくと、格差拡大装置になってしまうと考えている。格差解消に向けて取り組んでいるが、企業それぞれにも社会貢献の進め方についての思いがあると思うので、『みんなのコード』に限らず、NPO法人と企業の領域が重なっていいマッチングにつながればいいと思う」と述べた。

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