文化部活動の地域移行の推進に向け、文化庁は9月3日、『地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議』の下に設けられたワーキンググループ(WG)の初会合を庁内で開催した。静岡大学の北山敦康名誉教授が主査に就任し、持続可能な運営体制や活動場所の確保、地域移行後の部活動を巡る学習指導要領での位置付けといった論点について、11人の委員が意見を交わした。
国は2023年から25年までの3年間を「改革推進期間」と定め、休日の部活動を段階的に地域に移すことを目指している。このWGでは26年以降の地域移行の推進に向け、文化部活動についての意見集約を図るのが狙いだ。
北山主査は「教育現場や社会の理解は、かなり進んできたと感じる」と述べ、地域移行に取り組む学校は全国で拡大傾向にあると説明。文化庁の調査によれば、休日の活動を学校から地域のクラブに移したり、複数の学校が合同で活動する地域連携を行ったりした文化部活動の数は23年で全体の16%。25年には45%にまで増える予定だという。
しかし、地域移行を巡る課題は多岐に及ぶ。全日本吹奏楽連盟の星弘敏常任理事は「吹奏楽で小編成のバンドを立ち上げるには、楽器だけで600万円がかかる。現在、中学校で使われている楽器はほとんどが公費で購入したものだが、地域移行後は個人の負担になる」と話し、体験格差が生じる恐れを指摘した。
国の改革推進期間が25年で終わることを受け、財政支援に対する懸念の声も上がった。
富山県朝日町の木村博明教育長は、自治体の立場から「はしごを外されるのではないかという不安がある。地域移行を自治体と保護者の負担で担うのであれば耐えられず、逆行するのではないか。国は(改革推進期間の終了後にあたる)26年以降のビジョンを明確にしてほしい」と強調した。
地域移行後の部活動の位置付けについて、学習指導要領への記載の是非を問う意見も相次いだ。
星常任理事は「部活動は生徒の人間形成の場になっていた。部活動を学校教育から分離させるなら、それに代わる人間教育の場を教育課程の中に設けるべき」と主張。一方、武蔵野美術大学の大坪圭輔名誉教授は「多感な時期にさまざまな出会いを広げていく役割は大きい」と部活動の意義を認めながらも、「学校教育の一環として捉えるのは限界。変える段階が来ている」と述べた。
また、地域クラブ活動を行うにあたり、独自にガイドラインを策定した全日本合唱連盟の戸ノ下達也理事は「地域移行後、学習指導要領の中で外部指導員がどの程度の強制力を示していくのかという問題がある」として、国に対し「学習指導要領を踏まえた位置付けを早めに示してほしい」と求めた。