生成AIガイドライン改訂へ 授業活用の現場などから意見

生成AIガイドライン改訂へ 授業活用の現場などから意見
オンラインで開かれた生成AI利活用検討会議=オンラインで取材
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 学校現場での生成AIの利活用について検討している文部科学省の検討会議(座長・石川正俊東京理科大学学長)の3回目の会合が9月3日、オンラインで開かれ、生成AIのガイドライン改訂に向けて、委員を務める大学教授や生成AIを授業で活用している小学校教員などから意見が述べられた。この中では、「自走できる学び手をつくる観点から活用を考えるべき」「学ぶことの納得感の獲得に寄与する形で活用することが大切だ」などと幅広い意見が出された。

 同会議では、昨年7月に公表された学校現場で活用する暫定的な生成AIガイドラインの改訂に向けて議論を進めている。同日は、4人の委員がそれぞれの領域から活動状況やガイドライン作成に向けて意見を述べた上で、委員全員による議論が交わされた。

 このうち今井むつみ委員(慶應義塾大学環境情報学部教授)は、AIの利活用を考える上で、これからの時代に子どもたちに必要な資質能力と、そこにどんな影響を及ぼすかを考えることが重要だと指摘し、「子どもたちが簡単に答えの出る道具などという気持ちになると、多大な影響がある」と懸念される点にも触れた。

 その上で、「知識=学力」ではなく「学ぶ力=学力」であり、自走できる学び手を育てるという観点が必要だと強調。人間とAIの推論能力の違いについて、ビッグデータから帰納推論するAIに対し、人間はアブダクション推論(結果から遡って原因を推測する論理)をすることで創造的知性を生んで本質を見抜く直観などを身に付けていくと指摘し、「こうした直観を育てることが情報教育の本質であり、そのためにどんな支援をすべきかをガイドラインに盛り込むべきだ」と提言した。

 鈴木秀樹委員(東京学芸大学附属小金井小学校教諭)は、学校現場で生成AIの授業を実践している立場から意見を述べた。鈴木委員は国語の授業でAIに書かせた作文を巡って、児童からAIの間違いを指摘する声がいくつも上がった経験に触れて、「AIが正しいアドバイスを返してくれるとは限らないが、児童が間違いをどう直すべきか考えることで、教科の目的達成に寄与する授業設計も可能になる」と説明。

 「大事なのは学ぶことの納得感を生成AI活用によって得られるかどうかということではないか。課題を出すときに生成AI時代に必要かどうかという問いを、子どもたちが考える前にまず私たちが考えるべきであり、ガイドラインに何かしらの提言を入れたい」と述べた。

 他の委員からは、具体的な改訂に向けて保護者からの同意の取り付け方や著作権に関する考え方などを分かりやすく示すことや、現場の参考にするために好事例を別にまとめてはどうかといった意見も出された。AI活用の学びの在り方から具体的なガイドラインの項目まで幅広く意見が出されたことを踏まえて、次回はこれまでの論点をまとめてガイドライン改訂に向けてさらに議論を詰めることになった。

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