小中高教員の8割が特別支援教育経験なし 採用10年以内で

小中高教員の8割が特別支援教育経験なし 採用10年以内で
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【お断り】2024年9月12日に文科省が同調査の数値訂正を発表したため、記事中の数値を訂正後のものに改めています。2段落目の「いずれも経験なし」の割合について、高校90.7%→92.9%、全体80.4%→80.8%に修正しました。

 全国の小中高校の教員のうち、採用後10年までに特別支援教育に関する経験がない教員が全体の80%に上ることが、文部科学省が9月6日に公表した特別支援教育に関する調査結果で分かった。特別支援教育のニーズが年々高まる中、同省は全ての教員が10年以内に特別支援教育を複数年経験する措置を取るよう各都道府県教育委員会などに求めており、今回の調査結果を受けて同日、改めて各教委に速やかに人事上の措置を求める通知を出した。

 同省の「特別支援教育体制整備状況調査結果」(2023年5月1日時点)によると、今回初めて採用後10年までの小中高校の正規採用教員のうち、通級指導や特別支援学級担任など特別支援教育に関する経験が2年以上ある教員の割合を調べたところ、「いずれも経験なし」の割合が、小学校85.5%、中学校63.6%、高校92.9%で、全体では80.8%に上った。比較的経験者が多かったのは、中学校の特別支援学級の教科担任の教職経験で29.2%だったが、その他はいずれも10%に満たなかった。

 教師の特別支援教育に関する専門性の向上を巡っては、同省は22年3月、全ての新規採用職員がおおむね10年以内に特別支援教育を複数年経験するよう求める通知を全国の教委などに出している。このため今回の調査結果を受けて、改めて各教委に速やかに人事上の措置を求める通知を出した。

 また、障害のある児童生徒への支援の在り方を検討する「校内委員会」の設置率や実態把握の実施率など他の調査項目については、いずれも達成率が前年度を上回り、小中学校では9割以上となった。

通級指導を受ける児童生徒数は過去最多

 一方、「通級による指導実施状況調査結果」(22年度通年で調査)によると、小中高で通級による指導を受けている児童生徒数は全国で19万8343人と、前年より1万4464人増えて過去最多に上った。これは全国の小中高校に在籍する児童生徒数の1.6%に当たる。

 ただし、同省が22年度に行った調査で「学習面または行動面で著しい困難を示す」とされた児童生徒は小中学校全体で8.8%となっているのに対し、今回の調査で通級指導を受ける児童生徒が在籍する公立中学校は全体の約半数にとどまっていた。このため同省は、必要な通級指導が十分行われていない都道府県もあるとみて、今回の通知で、「全ての中学校に特別な教育的支援を必要とする児童生徒が在籍している可能性があることを前提に、指導体制の充実に努める」ことを各教委に求めている。

 また、公立高校においても通級指導を受けている生徒が在籍する学校が全体の10%にとどまっていた。同省は、高校での通級指導の制度化が2018年度と日が浅いことなども背景にあるとみて、各学校で通級指導の制度やその意義などを本人や保護者に周知することを求めている。

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