高校に制服は必要? 子どもの貧困の視点で議論、中教審WG

高校に制服は必要? 子どもの貧困の視点で議論、中教審WG
子どもの貧困問題の観点から高校の教育費の課題を議論したWG=オンラインで取材
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 高校教育の在り方を検討している中教審初等中等教育分科会のワーキンググループ(WG)は9月12日、第14回会合をオンラインで開き、教育費の負担軽減に関して、子どもの貧困問題の観点から議論を行った。子どもの貧困問題を専門的に研究している阿部彩東京都立大学教授と、経済的に困窮している家庭で、子どもが中学校や高校に入学する際に必要な費用を支援する取り組みを行っているセーブ・ザ・チルドレン・ジャパン国内事業部子どもの貧困問題解決事業チームの田代光恵さんが、高校生年代の子どもの貧困問題の現状や課題を報告。委員間の議論では、制服の必要性やさまざまな奨学金の事務手続きの負担などが課題に挙がった。

 阿部教授は近年の日本における子どもの貧困率の特徴として、高校生年代から20代前半に最も高くなる傾向にあると指摘。その理由として、子どもの年齢が高いほどひとり親世帯が多くなることや、子どもを産む年齢が上昇し、子どもが高校生になるころには親の定年が近付き賃金上昇が見込めない時期に当たっていることがあると説明した。

 その上で阿部教授は、高校生年代の生活困難は教育費だけでなく、生活面が大きいこと、高校の中でも定時制や通信制に通う子どもに、こうした生活面の困難を抱えている割合が高いことをデータで示し、「高校の年代は学校で困っている子どもをかなり判別することができる。小中学校では(各校でさまざまな子どもが)交ざってしまっているので個別の支援が必要になるが、高校の年代は学校単位で施策が打ちやすい。教育費の負担だけではなく、例えば給食の提供やさまざまな福祉への支援につなげるなどのサポートをしていかないと、本当の意味での教育達成にまでたどり着かない子どもが多く出てしまう。底辺の子どもに焦点を当てるのであれば、学校単位で生活を丸ごと抱える視点が必要だ」と提言した。

 また、田代さんはセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが行っている経済的に厳しい家庭を対象にした、子どもの中学校・高校の新入学を支援する「子ども給付金」の利用申請者へのアンケートなどから、高校の新入学時には、制服代やパソコン・タブレット代、通学費などが負担となっていることを紹介。高校生等奨学給付金が徐々に拡充されつつあるものの、交通費や昼食費など、対象になっていない費目があることや、実際に給付されるのは高校入学後で、必要なタイミングに給付されないことを課題に挙げた。さらに「学校の中で買えるものを買うようにしたり、決まっている援助額の枠の中で家庭に購入してもらったりといった意識を学校も持ってほしい。実際に教材を使ったか、家庭の負担になっていないかといった検証も必要になってくる」と指摘した。

 これらの発表を基に行われたディスカッションでは、今村久美委員(カタリバ代表理事)が「もはや本当に制服は要るのだろうかと感じた。私たちが活動している能登半島地震の被災地でも、小中学校の話ではあるが小学生から制服のある地域があり、二次避難先で新たに制服を買わなければいけないといったことがある。要るものと要らないものを文部科学省がリーダーシップを取って仕分けすることも、予算を積む以上に必要なのではないか」と問題提起するなど、制服の在り方についての意見が相次いだ。

 他にも、内田隆志委員(東京都立三田高校校長、全国高等学校長協会会長)が「就学支援金や奨学金に関する学校の事務負担がかなり大きくなっている。誰がどういう形でこれを担っていくか。こうした制度が拡充すればするほど学校の負担になっているので、この解消についても考えておかなければいけない」と述べるなど、事務手続きの負担が増えていることへの懸念の声もあった。

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