スポーツ庁は9月18日、地域移行後の部活動とスポーツ環境の在り方について議論する『地域スポーツクラブ活動ワーキンググループ』(以下、WG)の第2回目会合を開催した。先行自治体からのヒアリングとして静岡県掛川市、北海道北見市の取り組みを紹介。また、友添秀則主査(環太平洋大学体育学部教授)が「部活動改革の理念」「平日の部活動改革の方向性」などの議題を掲示。各委員によるディスカッションでは、地域移行という名称の適切性について疑問を投げ掛ける意見が相次いだ。
文部科学省は2023年から25年の3年間を部活動の「改革推進期間」に位置付け、全国の公立中学校を中心に、休日の部活動を地域の民間クラブに運営を移す地域移行の取り組みを進めている。WGは26年以降の方針について意見を集約し、来春をめどに取りまとめるのが狙いだ。
同日の会合では11月にも行われる中間取りまとめに向け、友添主査が部活動改革の理念や方向性、平日の部活動改革の在り方といった議題を掲示、委員による議論が行われた。
部活動改革の理念を巡っては、地域移行という名称が適切かどうかを問う意見が複数上がり、「学校から地域に投げて、それでおしまいという印象」「単に地域に委ねるだけ、とのイメージを否定できない」などの声が相次いだ。
名称変更の意見も出る中、立教大学スポーツウエルネス学部の松尾哲矢教授は「学校と地域を分断するのではなく、包摂しながら一緒になって作っていくという理念を明確にした方がいい」と指摘。一方、つくば市ジュニアスポーツ・文化活動地域展開コーディネーターの稲垣和希氏は「部活動改革の背景には教員の過重負担の問題がある。地域移行後も学校を活動場所に展開していくのであれば、教員による運営と捉えられかねない。地域活動の主体は学校ではなく、望まない教員がそこに関わらないということは、メッセージとしてしっかり打ち出していかなければならない」と強調した。
また、平日の部活動改革については、「学習指導要領の扱いがどうなるかによって、平日の扱いを考えたいとする学校の話はよく聞くところだ」(新潟県長岡市教育委員会の石川智雄課長)との声があった。
このほか地域移行の先進事例として、2つの自治体の取り組みが報告された。
21年から地域移行に向け始動した静岡県掛川市は、学校教育の一環であった部活動を生涯学習の一環と捉え直し、地域全体のスポーツ・文化芸術活動に広げる「部活動の地域展開」を推進。掛川市教委の大原基彰指導主事は「地域クラブの指導者からは『生徒指導はできない』と不安な声が上がり、一方で学校現場では、競技経験や指導経験のない顧問が珍しくない。この両者をつなぎ、指導方法を学べる体制づくりが必要。研修会や交流会を開いていきたい」と述べた。
一方、北海道北見市では、大会やコンクールへの参加を前提にした部活動を「地域クラブ活動」、それらに参加しない部活動を「短時間エンジョイ型」とし、26年を目標に移行を進めている。北見市教委の細川敏明主幹は「『短時間エンジョイ型』は平日の放課後1時間程度、教職員の勤務時間内での活動。楽しく活動したいという生徒の要望は多いため、うまくつなげていきたい。指導者不足は北見市でも深刻。市の面積は東西110キロに及ぶため、カバーできる指導者の数が足りない。希望するなら、教員も兼職兼業で携わってもらいたい」と期待を込めた。