月に一定時間の利用可能枠の中で、親の就労要件を問わずに時間単位で柔軟に保育施設を利用できる「こども誰でも通園制度」の制度化に向けた検討会議が9月26日、行われ、2024年度の試行的事業の実施状況と、同制度を実施する上での手引の骨子案が示された。
こども誰でも通園制度は、保護者の就労要件にかかわらず、0~2歳のこどもを月に一定の時間まで保育所などに預けることのできる新たな通園給付で、来年度に制度化され、26年度から本格実施される予定。今年度は、同制度の本格実施を見据えた試行的事業が行われており、その実施状況の8月末時点での速報値が公表された。
それによると、試行的事業を実施予定の自治体は118自治体で、そのうち受け入れを開始したのは96自治体(81%)だった。事業所の内訳は、認可保育所が242カ所(34.7%)、認定こども園(幼保連携型)が165カ所(23.7%)などとなっている。
試行的事業の実施事業所などに行われたヒアリングでは、人員配置の実態は保育施設によって多様だが、基本的には経験年数の長い保育士を専任として配置していることが分かった。「基本的に人手が足りていない」「毎回違うこどもが通うため、不安を感じているこどもへの個別対応や、アレルギーなどのリスク回避のための丁寧な聞き取りが必要なことを重視し、有資格者を配置している」など、人員配置への苦労が垣間見えた。
こどもとの関わりにおける工夫としては、「一人一人の好みや発達を見極めた個別のアプローチを行う」「利用のたびに発達状況が大きく変化することに対応するため、利用時に細かく聞き取りを行う」「限られた利用日数・時間の中でこどもの状況を見極めて保育計画や記録を作成する」などが報告された。
また、この日の検討会議では、こども誰でも通園制度の実施に当たって、実施事業者や従事する保育者、自治体の担当者らに向けた手引の骨子案も示された。手引には、制度の意義や概要を示した基本的事項と、安全の確保や食事の取り扱い、通園初期の対応や年齢ごとの関わり方、特別な配慮が必要なこどもへの対応、個人情報の取り扱いや一時預かり事業など他制度との関係、要支援家庭への対応など、事業実施の留意事項などがまとめられる予定で、事務局は「今後、必要に応じて改定を行っていく」としている。
これらの報告に対し、構成員からはさまざまな意見が上がった。伊藤唯道構成員(全国保育協議会副会長)は、補助基準額について「さまざまな園から『この事業に参加したいけれど、この補助額では到底やれない』という声を聞いている。多くの人がこどもたちを支えられるようになるため、補助基準額について検討してほしい」と訴えた。また、従事者の資格については「毎日来る子ではないという難しさがある。あくまで専門性を持つ有資格者を基本とすることを入れてほしい」と述べた。
王寺直子構成員(NPO法人全国認定こども園協会代表理事)は、「こども誰でも通園制度の趣旨は一時預かり事業とは異なり、乳幼児の豊かな成長を支えることなのであれば、月10時間の利用時間では到底足りない」と指摘。「定期的に利用し、個々の成長を見極めるためにも、最低1日5~6時間は必要だ」と強調し、利用時間の延長を訴えた。加えて「こどもの安心安全が大前提。そうした環境を提供できる施設においてのみ、この事業を実施してほしい」と要望した。
次回の検討会では、今回の構成員らからの意見を踏まえ、事務局が利用可能時間や人員配置基準などに関する来年度の対応方針案を提示する。今年12月までには来年度の事業の実施や26年度の法律に基づく給付制度の実施に向けて、議論の取りまとめをする予定となっている。