減少する特別支援学校の寄宿舎 栃木県教委、2校で来年3月廃止

減少する特別支援学校の寄宿舎 栃木県教委、2校で来年3月廃止
iStock.com/Mod Quaint
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 栃木県教育委員会は、栃木特別支援学校(栃木市)と那須特別支援学校(那須塩原市)の寄宿舎を来年3月で廃止する。2校は知的障害のある児童生徒が在籍する特別支援学校で、23年3月の廃止が公表されながら県議会に存続を求める陳情書が出され、廃止が延期された経緯がある。検討会の討議、報告書の提出を受けて8月19日の教育委員会で改めて廃止が決定された。特別支援学校の寄宿舎は全国的にも減少傾向にあるが、生活指導上の意義を訴える声も根強く、寄宿舎を含めた特別支援教育の在り方が改めて問われている。

 栃木県教委によると、2校の寄宿舎は児童生徒が月~金曜日まで宿泊し、土・日曜日は家庭で過ごす。希望者から年度ごとに入舎者を決定する。遠距離の通学困難者が対象だが、定員に余裕があれば、教育的理由などでも入舎できる。寄宿舎指導員が配置され、児童生徒の日常生活の世話や生活指導に当たっている。栃木県内には特別支援学校16校のうち5校に寄宿舎があり、2校のほかは盲学校、聾学校、肢体不自由の児童生徒が通うのざわ特別支援学校(いずれも宇都宮市)の3校に寄宿舎が残る。3校は県内全域など広範囲を通学圏としている。

 栃木特別支援学校は15人、那須特別支援学校は26人が寄宿舎に入舎しており、いずれも中学部、高等部の生徒。遠距離を理由とした入舎者は栃木1人、那須2人。開校当初の入舎者は栃木39人、那須25人で、全て遠距離を理由とした入舎だったという。開校から栃木は50年、那須は46年が経過しており、寄宿舎が設置された開校当初は県南部、県北部でそれぞれ唯一の、知的障害を対象とする特別支援学校(養護学校)だった。現在、知的障害の児童生徒を対象とした特別支援学校は県内に10校ある。

 2校の寄宿舎廃止後は、遠距離通学者の自宅近くにスクールバスの停留所を増設して対応する。また、2校で計27人の寄宿舎指導員は一部、特別支援学校各校に配置し、児童生徒の生活支援や生活訓練指導、授業の補助などに当たる予定。

 2校の寄宿舎廃止を巡っては、23年3月末での廃止を21年11月に公表したが、その後、存続の陳情を受けて延期。23年8月から関係者、有識者による検討会で、寄宿舎の存廃を含めた特別支援教育の在り方を議論してきた。今年3月に提出された報告書では寄宿舎に関し、「発展的解消が望ましい」という結論になった。7月には県内4会場で保護者との意見交換を実施し、県教委の方針を説明。アンケートも実施した。寄宿舎利用者の保護者から「生活指導などで寄宿舎に代わるものはない」と存続を求める根強い意見があったという。

 また、県教委が検討に当たって23年7月、全国の都道府県教委に聞き取り調査を実施したところ、特別支援学校997校のうち3割に当たる301校で寄宿舎が設置されており、寄宿舎を設置していない都道府県は11県だった。過去10年の全国での増減は、計画を含めて寄宿舎増設が5件、廃止が13件と減少傾向にある。増設は計画1件を含め全て通学圏を県内全域とする高等特別支援学校の新設に伴うもの。一方、寄宿舎の廃止10件、廃止計画3件は、利用者の減少、学校統合、通学困難の解消などが理由だった。

 県教委は「今後は共生社会の実現に向けた視点で特別支援教育の充実を図っていく。県内に知的障害特別支援学校の設置が進み、遠距離を理由とした寄宿舎の利用も減っている状況。施設の老朽化もあり、建て替えが予定されているわけではないが、寄宿舎の在り方を見直すタイミングとも考えている」と説明している。

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