パレスチナのガザ地区でイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まって1年となる10月7日、ガザ出身の医師で、中東の女性の教育を支援する財団を設立したイゼルディン・アブラエーシュ氏が都内で講演した。アブラエーシュ氏は「教育は人が持てる一番強い武器だ。ガザでも教育は重視されてきたが、このままではこの土地に子どもがいなくなってしまう」と、即時停戦のために一人一人が行動してほしいと訴えた。
アブラエーシュ氏はガザのジャバリア難民キャンプ出身で、貧困と悲惨な生活から抜け出すには教育が重要だと勉学に励み、医師免許を取得。パレスチナ人としてイスラエルの病院で働く初の産婦人科医となり、イスラエルとパレスチナの架け橋となりたいと努めてきた。2009年、ガザの自宅がイスラエル軍の戦車の砲撃を受け、3人の娘とめいが殺された後も、平等に共存するべきだと訴えてきた。また、現在在住するカナダで「ドーターズ・フォー・ライフ財団」を設立し、中東の若い女性たちに奨学金を与えるなどして教育を支援する活動をしてきた。
この日はアブラエーシュ氏の半生をたどった映画「私は憎まない」を上映後、講演が行われた。ユニセフの9月9日の発表によると、ガザではすべての学校で教育が再開されておらず、約62万5000人の子どもたちが1年間登校できていない状態が続いている。
アブラエーシュ氏は子供たちが教育を受ける重要性を説いた上で、「子どもが生き残っていたら、そこから教育は再建できる。今すぐ集団虐殺をやめるべきだ」と訴えた。また、自身が設立した財団についても触れ、「女性は子どもを産み育て、大きな心を持って世界を平和にすることができる存在だ。女性たちが教育を受け、意思決定をすることで世界は良くなると信じている。日本政府からもぜひ奨学金などで支援してもらいたい」と話した。