茨城県教育委員会の柳橋常喜教育長は10月3日、同県結城市にある県立高校2校で来年度から、互いの授業をリモートで受講できる取り組みを始めると発表した。教育環境充実を図り、学校の魅力を高めるため結城第一高校(長久保靜江校長、生徒276人)と鬼怒商業高校(青木一芳校長、生徒414人)の2校が、同県初の学校連携型キャンパス制を導入し、一方の高校でしか行われない選択科目の授業をもう一方の高校の生徒が受講できるという。
県教委によると、全国でも珍しい取り組み。両校は来年度、単位制を導入し、選択科目の一部はもう一方の高校の授業の受講で単位を取得できる。ウェブ会議システムを使い、PC室で受講する仕組みだ。例えば、「簿記」「プログラミング」「マーケティング」「ビジネス基礎」といった鬼怒商高の商業科、情報ビジネス科の授業を結城一高の普通科生徒がオンラインで受講し、鬼怒商高では開設されていない「化学基礎」「地学基礎」などの理科の選択科目や「英語探究」(ハイレベル英語)といった授業を、結城一高からの配信を受けて鬼怒商高の生徒が受講できる。教員からはそれぞれの教室の様子が画面で分かるため、通常の授業のように挙手をして生徒が質問、発表することも可能だ。
また、結城一高は外国人生徒支援重点校で、「日本語の言葉と文化」といった外国人生徒向け日本語指導の授業があり、鬼怒商高の外国人生徒も希望すれば受講できる。
実習を伴う単元などオンラインではなく、移動して授業を受けることも想定されているが、両校間の距離は3キロ程度と比較的近い。
両校は定員割れが数年続いて生徒数が減少し、それぞれ多様な選択科目を開設することが難しくなってきたという経緯がある。県教委は1月に発表した県立高校改革プランで両校に関し、統合ではなく、学校連携型キャンパス制導入の方針を示していた。
県教委は「少子化の影響もあり、それぞれ学校規模が小さくなったが、連携によって生徒もいろいろな体験ができ、学びの幅が広がる」と説明。2、3年生の選択科目を想定しているので、実際の相互の授業受講は2026年度から本格化するとみられる。
授業以外でも、野球、陸上競技、バスケットボールといった部活動で合同練習に取り組み、文化祭など学校行事でも連携する。結城市内のイベントへの合同参加も予定している。