もしも大地震に見舞われたら… 画像生成AIで自分事に

もしも大地震に見舞われたら… 画像生成AIで自分事に
生成された画像を検討する生徒=撮影:藤井孝良
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 学校でも生成AIの活用が進む中、東京都町田市にある和光高校(橋本暁校長、生徒694人)の「情報Ⅰ」の授業では、生徒がもしも大地震に見舞われたとき、自分自身がどんな状況にあり、どう行動するのかを、画像生成AIを使って具体的なイメージを膨らます「被災ジャーナル」をつくる活動が行われている。指導する小池則行教諭は「何度も生成AIとやりとりを繰り返すうちに、イメージがよりクリアになり、解像度が上がっていく」と話し、リアリティーのある自分事として考えるためのツールになると話す。

 「被災ジャーナル」は、「10月X日、マグニチュード7の大地震が東京を襲った」という想定で、そのとき自分がどのような状況で被災したのかを想像しながら、物語形式の文章でまとめる活動。9月から1年生の「情報Ⅰ」で取り組んでいる防災をテーマとした単元の集大成の課題として位置付けられており、地図アプリを利用した徒歩帰宅マップづくりなど、これまで学習した災害時の情報活用を踏まえ、それぞれの生徒がオリジナルの「被災ジャーナル」をまとめる。

 取材した日の授業で、小池教諭は、おととしに台風15号による豪雨で、静岡県で大規模な浸水被害が起きたときの写真を提示。このような写真をSNSで見たら、どう反応するかを問い掛けた。その上で、当時のSNS上では、画像生成AIで作成した実際とは異なる被害状況の写真が拡散され、問題になったことを紹介。画像生成AIで作成した写真をSNSで公開すべきかを考えさせた。

 こうした画像生成AIがはらむ問題を意識させた上で、生徒らはデザインアプリの「Adobe Express」を使って、「被災ジャーナル」の挿絵となる画像を生成。被災した状況を想像して書かれた「被災ジャーナル」のテキストをプロンプトに入力し、出てきた画像を検討。プロンプトの情報を補足したり、修正したりしながら、画像をよりリアリティーのあるイメージに近づけていく実習に取り組んだ。

 この「被災ジャーナル」の実践は2年目で、小池教諭は「防災の資料はたくさんあるが、いつ自分の身に起こっても不思議じゃないという心構えを持たせる必要がある。『被災ジャーナル』はテクノロジーを使いながら、想像力を膨らませて、批判的思考力も働かせながら、防災を自分事として捉え、パーソナルなものをつくることができる」と説明。

 授業で画像生成AIを使う意義については、「この課題では、生成AIを使ってもすぐにイメージ通りの画像ができるわけではなく、何度も生成AIとやりとりをしなければいけない。それを繰り返していくうちに、イメージがよりクリアになり、解像度が上がっていく。すると、普段の何気ない風景が変わって見えてきて、防災をちゃんと考えないとだめだと思えるようになり、生徒の現実に返っていく」と話す。

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