来年春の国公立大学の入学者選抜で、理工系分野で女子枠を設ける大学が30大学37学部に上り、今年春の2倍以上に増えることが、文部科学省が10月9日に公表した「令和7年度国公立大学入学者選抜の概要」で分かった。男子に偏りがちな理工系分野に女性の視点を積極的に取り入れようと、各地で導入が進んだとみられる。また、入学者の多様性確保に向けた選抜を同省が奨励していることを追い風に、総合型選抜や学校推薦型選抜を実施する大学の割合も過去最高に上り、総合型・学校推薦型選抜で入学する割合は募集人員全体の24.3%に上る見通し。
この調査は、同省が毎年度、各大学が7月末までに公表した入学者選抜要項の内容を調べて公表している。今回から「社会人」などの整理の仕方を一部変更したため、前年度と正確に比較できないデータもあるとしている。
調査結果によると、来年春の入学者選抜を実施する国公立大学は179大学637学部(前年度179大学625学部)で、募集人員は13万573人(同12万8899人)。
このうち理工系分野に女子枠を設ける大学は30大学37学部で、前年度の14大学17学部から2倍以上に増えた。初めて女子枠を導入する長崎大学は、「情報データ科学部」で10人、「工学部」で12人を学校推薦型選抜として設けた。同学の入試担当の井上徹志副学長は取材に対し、「社会課題の解決などにグループワークで取り組む中で、女性特有の視点は欠かせない。女子学生が加わることで学習環境の改善や多様な視点が入ることにつながり、むしろ男子学生にメリットがあると考えている。優秀な女子学生にぜひ入学してほしいというメッセ―ジと捉えてほしい」と話している。
理工系分野で新たに女子枠を設ける大学は、次の16大学。▽室蘭工業大学(理工)▽福島大学(理工学群)▽福井大学(工)▽滋賀大学(データサイエンス)▽香川大学(創造工)▽佐賀大学(理工)▽秋田大学(総合環境理工)▽茨城大学(工)▽千葉大学(情報・データサイエンス)▽新潟大学(工)▽三重大学(工)▽神戸大学(システム情報)▽和歌山大学(システム工)▽長崎大学(情報データ科、工)▽宮崎大学(工)▽山陽小野田市立山口東京理科大学(工)。
また、文科省が家庭環境や居住地域、性別など入学者の多様性確保に向けた選抜を奨励していることを追い風に、総合型選抜・学校推薦型選抜を実施する大学も増加傾向が続いている。
総合型選抜を実施する大学は125大学472学部(同105大学349学部)と前年度から増えた。実施割合は大学数で69.8%、学部数で74.1%に上り、過去最高となっている。総合型選抜の募集人員は9298人で、全体の7.1%に上る。
学校推薦型選抜を実施する国公立大学は173大学516学部(同173大学503学部)で、大学数は横ばいだが学部数はやや増加した。実施割合は大学数で96.6%、学部数で81.0%に上り、過去最高水準が続いている。学校推薦型選抜による募集人員は2万2475人で、全体の17.2%となっている。