能登豪雨で教育版DMAT発動 文科省と被災地にホットラインも

能登豪雨で教育版DMAT発動 文科省と被災地にホットラインも
能登豪雨で氾濫した川の爪痕が残る輪島市内の様子=松田さん提供
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 能登半島に大きな被害をもたらした9月下旬の豪雨災害の際、文部科学省は石川県輪島市と珠洲市に職員2人を派遣し、被災地の支援に当たった。同省は大規模災害時に同省職員や教員を被災地に派遣する教育版DMAT「被災地学び支援派遣等枠組み」(D-EST)の構築に向けて準備を進めており、制度化を前に初めて実践に移した形だ。現在、被災地とホットラインを設けて支援活動を続けており、同省担当者は「今回の経験を踏まえて、さらにきめ細かく災害時の支援活動の内容を詰めていきたい」と話している。

 石川県の能登半島北部では9月21日に記録的な豪雨に見舞われ、これまでに14人が亡くなり、400棟以上の住家が床上浸水などの被害を受け、通行止めやがけ崩れも多発した。輪島市では小中学校2校で床上浸水の被害が出て2日間、全小中学校が休校した。

 同省は直後から能登地方の被害状況の情報収集に当たり、省内や現地とも調整の上、文教施設企画・防災部参事官補佐の松田淳さんと初中局職員の2人を派遣することを決め、25日に現地入りした。

 松田さんらは同日、輪島市と珠洲市の教育長らとそれぞれ1時間ほどかけて被災状況を確認するとともに、支援ニーズを聞き取った。まず要望されたのはスクールバスの確保。道路の寸断で迂回(うかい)が必要なルートが生じ、増便の必要性が生じていた。また、浸水被害のあった学校で地下の設備が被害を受けて復旧の見通しが立たないことや、グラウンドののり面が崩れた被害も出ていること、さらにソフト面で、今後、子どもたちへの心のケアが必要になる見通しであることなどを詳しく聞き取った。「被災地を実際に見るとともに膝詰めで直接話を聞くことで、書面や報告では伝わらない現地の事情をリアルに把握することができた」と松田さんは振り返る。

 こうした現地のニーズを踏まえ、松田さんらは省内の関係部署と調整し、スクールバスの増便については直後に担当課が支援に乗り出し、施設被害やのり面被害についても支援メニューを調べて、復旧までの期間をいかに短縮できるか検討を重ねているという。さらに松田さんが窓口となって被災地の教育委員会幹部とホットラインを設け、県を通さなくても現地からの要望を直接聞き取る体制を取り続けているという。

 ただし、反省点もあると振り返る。「現地に入る前の準備不足が否めなかった。どんな視点で被災地の支援ニーズを聞き取るか、また文科省に戻ったときに関係課からどんな情報提供を求められるか、事前により詰めておくべきだった」と松田さんは語る。こうした経験を踏まえてD-ESTの今後の活動に生かしたいとしている。

能登半島地震の教訓踏まえ、前倒しで発動

 同省は、今年1月の能登半島地震の際、現地の支援ニーズの把握に手間取ったことを教訓に、現在、D-ESTの構築に向けて準備を進めている。今年8月に公表した中間まとめでは、大規模災害時に①文科省職員の被災地派遣②被災地外から被災地への学校支援チームの派遣③同省の調整で、被災地外から被災地への応援教職員やスクールカウンセラーの派遣――の3つを柱に、被災地を支援する方針を示している。

 今回は、D-ESTの構築を前に「できることから着手する」との方針の下、①について前倒しで発動する形となった。②の学校支援チーム派遣に関してもミーティングを行ったが、現時点で要請がないことから引き続き準備できる体制を維持しているという。

 同省は今後、D-ESTの構築に向けて、学校現場に教職員を派遣した際の指揮命令系統の在り方や活動に伴う費用負担の在り方などについて、関係省庁などと協議を重ねて12月中をめどに最終まとめを示すことにしている。

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