日本学術振興会が10月9日に発表した、こどもの貧困・こども政策に特化して行った国会議員へのアンケート調査の結果で、「最も優先度が高い政策」として選んだのは、1位が「学校給食無償化」、2位が「大学の無償化の所得制限撤廃」だった。こどもの貧困に取り組む支援団体が重視する「児童扶養手当の第1子からの増額」はそれより低く、研究グループリーダーの日本大学文理学部の末冨芳教授は「中高所得層も対象とする政策が支持される傾向があり、こどもの貧困解消の政策手段が必ずしも十分に理解されていない現状も把握できる」と話している。
調査は今年3月~7月にかけて709人の国会議員を対象に行われ、129人から回答があった(回収率18.2%)。回収率は女性議員が29.8%で、男性議員の16.8%より高かった。
こども政策について「最も優先度が高い政策」は、最も多かったのが「学校給食無償化」(17人)、次いで「大学の無償化の所得制限撤廃」(13人)、「児童扶養手当の第1子からの増額」(12人)だった。また、こども政策について必要だと思う政策を優先度の高いものから順に3つ選んでもらい、「最も高い」を3点、「二番目」を2点、「三番目」を1点とする「こども政策優先度スコア」を集計したところ、全体で最も多かったのは「学校給食無償化」(104点)、次いで「大学の無償化の所得制限撤廃」(69点)と上位2番目までは変わらず、3番目が「高校の無償化の所得制限撤廃」(54点)だった。この集計では「児童扶養手当の第1子からの増額」(47点)は6位だった。
さらに、こども子育て予算の財源としてふさわしいものを、選択肢から3つまで選んでもらったところ、「その他歳出削減」(65人)が最も多く、次いで「消費税以外の増税」(54人)、「国債」(38人)という結果となった。
最も優先度が高い政策として「学校給食の無償化」「大学の無償化の所得制限撤廃」が上位を占めたことについて、末冨教授は「中高所得層も対象とする政策が支持される傾向にある」と分析している。一方で、ひとり親世帯への支援で重視されている「児童扶養手当の第1子からの増額」が「こども政策優先度スコア」では順位が下がっていることについて、「こどもの貧困などに相対的に関心の高いと思われる国会議員でも、貧困解消のための政策手段が必ずしも十分に理解されていない現状が把握される」としている。
児童扶養手当の第1子からの増額を巡っては、物価が高騰する中、こどもの貧困問題に取り組む支援団体が政府に求めたが、政府のこども未来戦略では見送られた経緯がある。こうした状況も踏まえ、末冨教授は「児童扶養手当拡充の投資効果は大きいが、ひとり親世帯が最も深刻な状況であることが伝わっていないことがうかがえる。国会議員の理解がより必要な事態も把握されたので、今後の調査・研究につなげていきたい」と話している。