都の総合教育会議にスタンフォード星氏ら 学校の在り方巡り提言

都の総合教育会議にスタンフォード星氏ら 学校の在り方巡り提言
総合教育会議であいさつする小池都知事=撮影:松井聡美
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 東京都は10月17日、今年度初めてとなる総合教育会議を開催し、小池百合子都知事や坂本雅彦教育長、教育委員らが「これからの学校の在り方について」をテーマに協議した。その中で、スタンフォード大学オンラインハイスクール校長の星友啓氏が講演。世界の教育の潮流を踏まえ、学校において「外発的なやる気から内発的なやる気へのシフト」が必要だと提言した。

「内発的なやる気へのシフト」「ホールチャイルドアプローチ」を提言

 星氏はスタンフォード大学オンラインハイスクールについて「学年や時間割、統一のカリキュラムなどはない。子どもたちが自分に合った学びをデザインできるような学校の在り方を追究してきた」と紹介。また、「オンラインの学校であるが故に、SEL(社会性と情動の学習)を根幹に据えてやってきた」と説明した。

 そうした同校の教育や世界の潮流を踏まえ、星氏はこれからの学校の在り方について「外発的なやる気から、内発的なやる気への転換」を提言。「外発的なやる気は短期的にはやる気が上がったように見えるが、ずっと続けるとやる気がなくなってしまう。そうではなく、これをやることで満足できるという内発的なやる気にシフトしていけたらいい」と展望を述べた。

 また、(一社)FutureEdu代表理事の竹村詠美氏は、誰もが自分らしく成長することを支える「ホールチャイルドアプローチ」について講演。「ホールチャイルドアプローチ、つまり心身頭全体の調和がとれた発達を促すことこそが、主体的に学びに向かう姿やウェルビーイングにつながる」と強調した。

 その上で、ホールチャイルドアプローチを学校で実践するための4つの提言として、▽カリキュラム中心から学習者中心の教育デザインへの転換▽時数で切り上げるのではなく、子どものペースやスタート地点に合わせた習熟度ベースの学び▽テストの結果だけを測るのではなく、学びの過程を捉えた子どもの継続的な成長につながるアセスメント▽学校が子どもたちにとって自分らしく過ごせる居場所、かつ挑戦できる場所になっていくために心理的安全性の高い環境をつくる――を挙げた。

データ活用、働き方改革……委員らが進むべき方向性を議論

 こうした提言を踏まえ、教育委員は「今の日本の教育でネックになっていること」について議論した。元五輪選手の萩原智子委員は「私の現役時代と比較して、今はスポーツ界でのデータ活用は当たり前になり、アスリートのパフォーマンスも格段に上がった。こうしたことは教育においても同じことが言えるのではないか。現状では効率的なデータ活用が確立されていないので、今後は蓄積したデータを誰が、どう活用していくかを考えていく必要がある」と話した。

 また、東京学芸大学教育学部教授の高橋純委員は「今ある個別の問題を一つ一つ積み上げていって、理想や理念に近づけていくのではなく、理想や理念から個別を考えていく必要があるのではないか」と述べ、「一つの教科で満点を取ったら、生きる力につながるかというと、そうではない。教員たちは、学習指導要領の理念から考えながら、教科の指導ができているだろうか。個別と理念の乖離(かいり)が非常に大きな課題だ」と指摘した。

 学校が今後、どう変わっていくべきかについて、小児科医の秋山千枝子委員は「誰一人取り残さないという方針の実現のためには、教員定数の改善、支援員やスクールカウンセラーなどの配置の再検討が必要だ」と強調。医療機関では医師、看護師、看護助手、医療事務など、多くの人材が協力し合って業務をこなしていることを挙げ、「教育現場も担任が一人で学級を担う仕組みを変えることで、子どもたちへの細やかな支援と教育、教員の働き方改革ができるのではないか」と話した。

 さらに、これまで学校・教員が担ってきた業務を整理するために文部科学省が示した「学校・教師が担う業務にかかる3分類」(基本的には学校以外が担うべき業務/学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務/教師の業務だが、負担軽減が可能な業務)に言及し、「学校が担わない業務を、都として社会に示すことが、一番簡単で予算のかからない働き方改革ではないか」と訴え掛けた。

 最後に小池都知事は「今回の議論の内容を、東京の教育の方向性を示す教育施策大綱の改訂につなげていきたい」と話した。

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