2040年以降の高等教育の目指すべき姿について、中教審の「高等教育の在り方に関する特別部会」が中間まとめを公表したことを受けて、10月16日、大学分科会と同特別部会の合同会議が文部科学省でオンラインを併用して開かれた。会議では、2040年に大学の定員充足率が全体で75%になることを前提に、高等教育の質や規模、アクセスを巡って議論が交わされ、委員からは「規模の適正化に向けて、国全体で需給バランスを図っていくために強硬な手段も取らざるを得ないのではないか」「学生の勉強による競争を促すために、卒業定員を90%にすることも考えられるのではないか」などとの意見も出された。
同特別部会がまとめた中間まとめでは、急速な少子化が進む中で2040年以降の社会を見据えた高等教育が目指すべき姿などが示された。今後の高等教育政策の方向性として、教育研究の質のさらなる高度化や、学生数不足による質の低下を避けるための規模の適正化、地域における質の高い高等教育へのアクセス確保の3つを柱とし、具体的な支援方策が示された
合同会議はこの中間まとめと、その後、10団体と2人の有識者へのヒアリングで出された意見も踏まえて論点を整理して開かれた。初めに永田恭介分科会長(筑波大学長)が「2040年の大学定員充足率は進学率を上げて見積もっても75%となり、これは変えようのない事実だ。この状況を見据えて質・規模・アクセスをどう考えていくか、意見をいただきたい」と各委員に呼び掛けた。
これを受けて村田治副分科会長(関西学院大学名誉教授)は「教育の質を上げる一番の問題は、学習時間が足りないことに尽きる。米国の学生が勉強するのは、入学は易しいが卒業が難しいからであり、例えば卒業定員を90%として勉強による競争を入れることでサイズとクオリティーの問題に対応する、こうした大きな方向転換をしない限り日本の学生の勉強時間は増えないのではないか」と問題提起した。また、大学を評価する認証評価機関にばらつきがあることも指摘して、国際的に通用する認証評価機関であることを示すため、こうした機関をさらに評価する「メタ評価機関」をつくることが必要だと強調した。
また、須賀晃一臨時委員(早稲田大学副総長)は、規模の適正化を巡って、「充足率が75%に減る中で需給バランスを国全体で図っていくには、強硬な手段も取らざるを得ないのではないか。ただし一律にやると地方は疲弊するので、地域のコンソーシアムのような組織がどのような機能を持つか、真剣に考える必要がある」と述べた。
大野英男臨時委員(東北大学総長特別顧問、同大学前総長)は、情報公開の必要性を強調した。「現状では横断的な比較ができないことが大きな問題で、全国学生調査の結果や認証評価機関の結果も公表すべきだ。高等教育がきちんと社会と向き合っていることが示されないと、高等教育への信頼を醸成できないのではないか」と指摘した。
こうした意見なども踏まえ、田中マキ子臨時委員(山口県立大学長)は「公立大学の立場としては、例えば看護系の単科大学は60%から70%を地域医療を担う人材として養成しており、75%の充足率に対して一律にコントロールされると地域が成り立たなくなってしまう。コントロールの指標に地域の状況をどう組み入れるかの観点も入れて、適正な高等教育の在り方を考えてほしい」と要望した。
今回出された意見を踏まえて同特別部会でさらに議論を重ね、年度内に答申案をまとめる方針。