10月27日投開票の衆院選に向けて、大学教授やNPO、労働関連団体などによる「すべての人が学べる社会へ 高等教育費負担軽減プロジェクト」は与野党8党に対し、高等教育費の負担軽減や教育機会均等に関する考え方、政策、取り組みについて問いただすアンケートを実施し、結果を公表した。自民党からは回答を得られなかったが、回答した7党は高等教育無償化に賛成の意向を示し、大学等修学支援制度の拡充、奨学金返済の負担軽減などを求める同プロジェクトの提言にもおおむね賛意を示す回答が並んだ。
同プロジェクトは、奨学金問題対策全国会議共同代表の大内裕和武蔵大学教授、同会議事務局長の岩重佳治弁護士、認定NPO法人キッズドアの渡辺由美子理事長、日本若者協議会の室橋祐貴代表理事、労働者福祉中央協議会の芳野友子会長(連合会長)の5人をプロジェクトメンバーとし、高等教育費や奨学金返済の負担軽減のため、公的負担の大幅拡充を求めて活動。衆院選に合わせて、自民党、立憲民主党、日本維新の会、公明党、共産党、国民民主党、れいわ新選組、社民党の8党に対し、①高等教育無償化についての基本的な考え②授業料の半額化③大学等修学支援制度の拡充④奨学金返済の負担軽減――に関してアンケートでの回答を求めた。
プロジェクト事務局によると、衆院解散前に衆参合わせて3人以上の国会議員がいる政党を対象とした。8党のうち7党は17日ごろまでに回答が出そろい、18日に公表。自民党は23日正午までに回答がなかった。
アンケートでは、高等教育無償化については7党とも「基本的に賛成」と回答。立民は「家庭の経済力に左右されず誰もが同じスタートラインに立てる社会の実現を目指す」とし、維新は「憲法の定めるところにより高等教育を無償とし、機会平等社会を実現する」、公明は「2030年代の大学等の無償化を目指し、支援制度対象者の拡大、給付の拡充に取り組む」、共産は「教育の成果は個人ではなく社会全体のもの。受益者負担主義を改め、無償化に踏み出すべき」、国民は「高等教育の授業料減免と返済不要の給付型奨学金の拡充を進める」、れいわは「無償化は全ての学ぶ意欲のある人に平等に機会を与える政策」、社民は「段階的にでも高等教育の無償化を進めるべき」というような意見をそれぞれ付している。
また、大学等修学支援制度を多子世帯に限定せずに拡大することや、同制度の授業料減免制度の拡充、奨学金返済者全体の負担軽減については、各党とも同プロジェクトの提言・要望に賛成の姿勢を示す回答だった。
大学、短大、高等専門学校、専門学校の授業料について、同プロジェクトは当面、全学生を対象に半額を求めている。公明、国民は授業料半額化には直接の回答はないものの、高等教育への負担軽減や給付型奨学金制度について言及した。そのほかの立民、維新、共産、れいわ、社民は授業料半額に賛同した。
授業料半額や修学支援制度の拡充の設問では財源に触れている回答もあり、「不合理な歳出を徹底的に見直すとともに抜本的な税制改革に取り組む」(立民)、「行財政改革と経済成長による税収増、外国為替資金特別会計の一部で基金を作り運用する案を検討」(維新)、「大企業への優遇税制を見直す」(共産)、「教育国債発行で来年からの実現も可能」(国民)、「既存の財源含め、国債発行」(れいわ)、「法人税率引き上げや大企業の内部留保への臨時課税」(社民)といった提案が並んだ。
アンケート結果は同プロジェクトHPで閲覧できる。