部活動改革の一環で、愛知県豊橋市はこのほど、来年9月から市立中学校の土日祝日の部活動を廃止する方針を決めた。受け皿として、小学生を対象に放課後に行っている「のびるんdeスクール」を土曜日に中学生も参加できるようにする。土日祝日に部活動を実施しない取り組みをすでに実施している、東京都板橋区立板橋第三中学校の武田幸雄校長は「休みの日の中学生の過ごし方改革になる」と強調する。
土日祝日の部活動を廃止する方針を決め、学校を通じて保護者に周知した豊橋市。来年9月から市立中学校では公式の大会を除き、原則として土日祝日に部活動は行われない。
しかし、市教委の担当者は「急に縮小するわけではない」と説明する。すでに豊橋市では「日曜日を地域に返そう」という考えの下、2001年度から毎週日曜日については部活動を行っていなかった。現在は土曜日の部活動も月に2回だけとなっており、国の部活動の総合的なガイドラインが見直されたことや、総合型地域スポーツクラブで活動する生徒が一定数いることなどから、土日祝日の全面的な部活動の廃止に踏み切った。
一方で、総合型地域スポーツクラブが十分にない地域があることや、生徒へのアンケートで、学校の部活動とは違う競技などに親しみたいという声も上がった。これらを受けて、市教委では総合型地域スポーツクラブと並ぶもう一つの受け皿として、これまでは小学生向けに平日に実施していた放課後子供教室「のびるんdeスクール」を発展させ、土曜日に中学生がさまざまな活動に参加できるようにする。
市教委の担当者は「今後は平日の部活動をどうしていくかが課題となる。国の議論を注視しながら、どう進めていくか動向を探っていきたい」と話す。
板橋第三中では、数年前から土日祝日の部活動を原則として実施しないようになり、教員や保護者、生徒の間でも定着しているそうだ。土日祝日に部活動があるのは大会の公式戦があるときだけだが、それだけだと試合勘が鈍ってしまうといったときは、顧問の判断で他校との練習試合を組むことがある。しかしそれも、頻繁に行われるわけではない。
かつては部活動に熱心な教員も多く、土日祝日の活動も行われていたが、学力向上や授業などの本来の業務に教員が時間と労力を費やせるようにと、まずは平日の活動時間のルールを見直し、活動時間が長い夏場でも、午後6時半には完全下校を厳守するようにした。武田校長は、活動時間にメリハリをつけたことで、「生徒らはだらだらと練習することがなくなり、決められたルールの中で最大限のパフォーマンスを出すことを意識するようになっている」と話す。
武田校長は第二段階として、土日祝日に部活動をしない方針を打ち出した。部活動の指導に熱心な一部の教員からは当初こそ反発もあったが、武田校長は学校の課題として学力向上を挙げ、教科指導にこそ時間と労力をかけるべきだと説得した。一方で、家庭に小さい子どもがいる教員などからは、歓迎されたという。
保護者に対しても、武田校長は毎年、「教員が本来の業務に向き合い、心身の健康を維持できるようにすることで、クオリティーの高い教育につながる」と説明。「土日祝日に生徒が学習課題に取り組んだり、部活動以外の興味関心に向き合ったりする。あるいは家庭で家族が一緒に過ごす時間を増やしたり、地域の行事などに参加したりできるようにする。そうした休みの日の中学生の過ごし方改革であることを前面に打ち出している」と、土日祝日の部活動をやめる意義は、教員の働き方改革だけにとどまらないことを強調する。