東京都教育委員会は10月24日、不登校や発達障害など困難を抱える生徒に対する支援を強化していくための「都立高校におけるチャレンジサポートプラン」を策定し、公表した。教室以外の生徒の居場所や相談場所として校内居場所カフェや仮想空間上の学習環境を用意し、多様な生徒に幅広く対応できる教育課程の充実を図った新たなタイプの学校を開校するなどしていく。
都立高校における困難を抱える生徒は増加傾向にある。小中学校における不登校児童生徒数の合計は10年連続で増加し、不登校生徒の6割強が定時制課程に在籍。また、都立高校における日本語指導が必要な生徒数(外国籍)は10年間で約2倍の733人に増加しており、日本語を習得できる環境の整備と円滑な学校生活を送るための支援が必要とされている。
さらに全日制高校2年生の4.1%、定時制高校2年生の8.5%に世話をしている家族がおり、ヤングケアラーに対する理解を深める取り組みや、相談体制の整備が急務となっている。
また、発達障害の可能性がある生徒の都立高校全体に占める割合は、2021年度の都教委調査によると3.4%で、全日制課程では2.5%、定時制課程では14.4%と、定時制課程に多く在籍していることが分かっている。
一方で、以前は勤労青少年が8割以上だった夜間定時制課程では、23年度には生徒全体の約3%まで減少。昼夜間定時制課程の応募倍率は1.26倍なのに対し、夜間定時制課程は応募倍率が0.31倍で、極端な小規模化が進んでいる。
こうした現状や課題を踏まえ、困難を抱える生徒に対する支援の取り組みを総合的に進め、学習環境や教育環境の充実を図ることを目的に、「都立高校におけるチャレンジサポートプラン」が策定された。同プランの計画期間は25年度から27年度までとしている。
支援は、①生徒が相談できる体制の充実②生徒の事情や悩みに応じた適切な支援③多様な生徒の受け入れ環境の充実━━の3つの柱で取り組んでいく。
具体的に①では、教室以外の生徒の居場所や相談場所として「校内居場所カフェ」や仮想空間上の学習環境などを用意。日本語指導が必要な生徒に対しては、日本語指導支援員や通訳などの専門家の紹介といった支援を実施していく。
②では、不登校経験のある生徒などの学び直しのために、基礎的な科目を設置し、少人数のきめ細かい指導を通して学力の定着を図る。また、日本語能力が入門・初級レベルの新入生には、春期・土曜日本語講座を実施。発達障害などのある生徒の就労を支援するため、民間企業などと連携し、就労スキルの習得や企業とのマッチングも実施してく。
③では、多様な生徒に幅広く対応できる、柔軟できめ細かな教育課程や教育相談体制の充実を図った新たなタイプの学校を開校する。具体的には、不登校経験のある生徒などにとって適切な環境を用意しているチャレンジスクールなどを新設・増学級する。25年度にはチャレンジスクールの立川緑高校を新設、六本木高校、大江戸高校では増学級し、昼夜間定時制課程の砂川高校の夜間部を増学級する。また、不登校経験のある生徒など、多様な生徒の実情に対応した入学者選抜の在り方を検討していくとしている。
チャレンジサポートプランは、8月に案を公表後、パブリックコメントを通じて、都民の意見を反映した上で策定された。同日に行われた都教委の定例会では、委員から「学校の仕組みだけでは、多様な子どものニーズをカバーしきれなくなっている。今後もどんどん社会は変化し、子どもたちのニーズも変わっていく。そうした視点を持って、改善を重ねていく必要がある」との指摘があった。