消防庁が10月29日に発表した、今夏に熱中症のため救急搬送された人数は9万7000人余りで過去最多に上ったが、小中学校などの教育機関は3885人で昨年より10%減ったことが分かった。文部科学省の学校安全担当者は「文科省としても熱中症対策のチェックリストを学校に配布するなど対策を進めてきたが、各学校の熱中症防止に対する意識が高まり、取り組みが進んだ効果もあるのではないか」と話している。
同庁が公表した資料によると、今年5月から9月の間に熱中症のため救急搬送された人数は全国で9万7578人に上り、昨年より6111人増えて統計を取り始めた2008年以降で最多となった。今年は厳しい暑さが長期間にわたって続き、特に9月の搬送者が過去最多となったことなどが背景にあるとみられる。年齢別では、高齢者(65歳以上)が最も多く5万5966人(全体の57.4%)に上り、次いで成人(18歳~65歳未満)が3万2222人(同33.0%)、少年(7歳~18歳未満)が8787人(同9.0%)などとなっている。
発生場所別で見ると、最も多いのは住居で3万7116人(全体の38.0%)、次いで道路が1万8576人(同19.0%)、公衆(屋外)が1万2727人(同13.0%)の順だった。一方、教育機関(幼稚園、保育所、小中高、大学など)は3885人(同4.0%)で、昨年の4310人から10%減少し、この区分では唯一、昨年を下回った。
熱中症対策を巡っては、今夏も危険な暑さが予想されたことを踏まえ、文科省は今年4月、熱中症の防止対策を呼び掛ける通知で、初めて熱中症対策のチェックリストを作成して送付した。この中では、過去に起きた熱中症の疑いがある児童生徒の死亡事故の事例をもとに、「運動後は十分にクールダウンするなど、体調を整えた上でその後の活動(登下校を含む)を行うよう指導する」ことや、夏休み明けなどに「体を暑さに少しずつ慣らしていく『暑熱順化』を取り入れた無理のない活動計画を立てる」など、具体的な記述で対策の強化を呼び掛けた。
こうした効果もあってか、昨年は熱中症の疑いがある重篤な事故の報告2件が文科省に寄せられたが、今年は現時点で報告はないという。同省男女共同参画共生社会学習・安全課の吉田慶太学校安全係長は「文科省として4月末や夏休み明けに熱中症対策への注意喚起を行っており、各学校での意識が上がって取り組みも進んでいると感じており、こうした効果もあるのではないか。引き続き、子ども自身も気を付けるよう意識を高めることなども含めて、熱中症対策を呼び掛けていきたい」と話している。