6月に実施された高知県の教員採用試験で小学校教諭に合格した280人のうち、204人が辞退をしていたことについて、阿部俊子文科相は11月5日の閣議後会見で、周辺自治体よりも教員採用試験を早く実施して多くの受験者数を確保しつつ、辞退者が出ることを見込んで採用予定人数を大幅に上回る人数を合格させている高知県の手法について、「任命権者の教師の人材確保に向けた工夫の一つ」との認識を示した。文部科学省では教員採用試験の早期化を各自治体に促しているが、早期化しても辞退者が増えれば教員の人材確保につながらないのではないか、との指摘に対しては「他の業種との人材確保競争の観点から、実施時期の前倒しは必要」と、早期化の方針を堅持する考えを述べた。
高知県教委によると、6月1日に実施された教員採用試験では、小学校教諭で130人程度の募集に280人の合格者を出していたが、10月29日の段階ですでに204人の辞退者が出ていた。県教委では必要な教員数を確保するため、13人を追加合格とし、さらに12月に2次試験を実施して、40人程度を募集することになった。高知県は周辺自治体よりも早めに教員採用試験を実施することから、併願する受験者がもともと多く、多数の辞退者が出ることを見越して募集人数を大幅に超える合格者を出していたが、今年は辞退者が想定を上回ってしまった格好だ。
阿部文科相は10月28日から11月2日にブラジルで行われていたG20教育大臣会合の場でも、教員の人材確保が各国共通の課題になっていることを紹介した上で、「(高知県は)教員採用選考を周辺の自治体より早く実施するということによって、できるだけ多くの受験者数を確保した上で、辞退者が出ることを見込んで、この採用予定人数を大幅に上回る人数を合格者とするという方法を、従来から実施してきたというふうに聞いている。こうした取り組み方針も任命権者の教師の人材確保に向けた工夫の一つであると受け止めている」と述べ、文科相として、計画的な新規採用、現職以外の教員免許保有者への研修の実施、採用選考の工夫改善などの取り組みを、教員採用試験を実施している自治体に促していると説明した。
文科省では教員採用試験の実施時期を前倒しすることも各教委に働き掛けている。会見で教員採用試験を早期化しても辞退者が大量に出れば教員の確保につながらないのではないかと問われると、阿部文科相は「民間や他の職種の公務員の採用活動に比べ、時期が遅くなっているということもあり、他の業種との人材確保競争の観点から、実施時期の前倒しは必要であると考えている。特に他の業種への就職が多い教育学部以外の学部出身者が多く受験する、中学校、高校の新卒受験者を確保し、教師を職業選択の際の選択肢に入れていただくためには、特に早期化は必要な取り組みであるという考えに変わりはない」と従来の方針を改めて強調した。