文部科学省から公表された2023年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果を受け、いじめ防止対策に関する関係省庁連絡会議が11月8日、こども家庭庁で開かれた。会議ではいじめ未然防止教育のモデル構築や、重大事態調査報告書を活用したいじめの質的分析のための専門家会議の新設など、当面、特に重点を置いて検討、実施していくいじめ防止対策を決定した。
23年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果では、小、中、高校、特別支援学校でのいじめの認知件数が、73万2568件(前年度比5万620件増)と過去最多だった。また、いじめの重大事態の発生件数も1306件(同387件増)に上り、過去最多となった。
いじめ防止の観点からは、いじめ未然防止教育の指導案や指導教材など、いじめ未然防止教育のモデル構築を進める。また、国に提供された重大事態調査報告書から、誰が・いつ・どのような対応を行えば、いじめが重大化しなかったのかなど、いじめの端緒・予兆や重大化要因などを分析し、学校での未然防止に活用するため、専門家会議を新設する。
早期発見については、1人1台端末の活用による「心の健康観察」導入の推進、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置充実、SNSなどを活用した教育相談体制の整備推進など、子どもの声を聴き、子どもの視点に立った相談体制の充実を図っていく。
いじめへの対処としては、教育委員会の下で警察OBなど多職種の専門家によるチーム支援のモデルを構築するなど、教育・福祉・警察などの連携による加害児童への対応を強化する。また、首長部局でいじめ解消に取り組む仕組みを導入するためのガイドラインを作成するなど、重大事態対応における第三者性の確保に努める。加えて、小学校低学年段階からのインターネットの適切な利用に関する啓発など、ネットいじめやネット上での誹謗中傷対策を強化していく。
また、学校、教育委員会などの重大事態対応に関する平時からの備えを徹底し、いじめ調査アドバイザーの積極的な活用を促進するなど、重大事態対応などに関する教育委員会、首長部局などへの助言を進める。
三原じゅん子こども政策担当相は「こども家庭庁でも、学校外からのアプローチによりいじめをなくしていく取り組みについて、実施地域をさらに広げていきたい。私自身、先頭に立ち、子どもの声、現場の意見を聞きながら、子どもの悩みを受け止められるような取り組みを進めていきたい」と強調した。
また、阿部俊子文科相は「今回決定した、いじめ防止対策のさらなる強化で示された重点項目について、関係省庁とも積極的に議論をしていきたい。全ての子どもたちが安心して学校に通うことができるよう、いじめ防止対策の改善、強化に全力で取り組んでいく」と話した。