公立学校の教員の給与の在り方を巡り、財務相の諮問機関である財政制度等審議会の分科会で、働き方改革を着実に進めていくことを条件に給特法に基づいて支給される教職調整額を現行の4%から10%まで段階的に引き上げる財務省の案が示されたのを受けて、阿部俊子文科相は11月12日の閣議後会見で、財務省案は「教職員定数の改善については一切示されていない」と批判した。
また、財務省案では教職調整額が10%に達した段階で、時間外勤務に見合った手当(残業代)を支給する仕組みへの移行を検討する方針だが、文部科学省は同日、この財務省案に対する見解をホームページで公表し、仮に残業代を支給する仕組みになれば、「勤務時間外の業務に逐一管理職の承認が必要になるなど、専門職としての教師の裁量が著しく低下し、創意工夫を発揮することが難しくなる」と反論した。
11月11日に開かれた財政制度等審議会の財政制度分科会で示された財務省案では、文科省が来年度予算案の概算要求で盛り込んだ教職調整額の13%への引き上げなどの方針に対し、実効性のある学校業務の縮減策と連動していないことや、各教員の在校等時間に差があるにもかかわらず、その差に応じたメリハリがないことなどを理由に、労働基準法に基づく残業代を支給する方が、教職の魅力向上につながると提案。10%を目標に教職調整額を段階的に引き上げ、10%に達した段階で残業代を支給する仕組みへの移行を検討することが考えられるとした。
ただし、教職調整額の引き上げには、働き方改革の進捗(しんちょく)による時間外在校等時間の縮減などを条件とし、時間外在校等時間の縮減が達成できない場合は、教職調整額引き上げ分の財源を、より有効な働き方改革の手段に振り向けるとした。
この財務省案に対し、阿部文科相は「教師の長時間勤務を改善する方策として、教職員定数の改善については一切示されていない。このような考え方に対し、私どもとしては教職員定数の改善を行うことなく、学校現場における業務削減の努力のみによって、時間外在校等時間の縮減をしようとするものであり、学校現場への支援が欠如しているので、教職員定数の改善をしっかりと、まずは要求していく」と強調。
さらに、いじめや不登校などのさまざまな課題を学校現場が抱えている中で、時間外在校等時間の縮減が容易ではない地域・学校が存在するとして、「教職員定数の改善も行わずに、時間外の在校時間の縮減を教職調整額の引き上げの条件とすることは乱暴な議論であり、真に必要な教育指導が行われなくなる恐れがある」と警鐘を鳴らした。
また文科省でも同日、ホームページに財務省案に対する見解を公表した。特に、時間外の在校等時間の縮減を給与上のインセンティブとすることについては「子供たちへの対応の必要性を判断して業務に当たっている教育に関する専門職としての教師の存在意義を没却させるもの」だとし、「勤務時間の縮減を給与改善の条件とすれば、必要な教育活動を実施することがためらわれ、子供たちに必要な教育指導が行われなくなるなど、学校教育の質の低下につながる」と反論。
仮に残業代を支給する仕組みに移行した場合、「勤務時間外の業務に逐一管理職の承認が必要になるなど、専門職としての教師の裁量が著しく低下し、創意工夫を発揮することが難しくなる」と指摘した。