教育課程の負担感軽減が重要 学習指導要領改訂で、阿部文科相

教育課程の負担感軽減が重要 学習指導要領改訂で、阿部文科相
グループインタビューに応じる阿部文科相=撮影:藤井孝良
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 阿部俊子文科相は11月15日、報道各社のグループインタビューに応じ、次期学習指導要領に関して、教育課程の実施にあたっての学校現場の負担感は重要な課題だとの認識を示した。その上で、中教審への次期学習指導要領の諮問にあたって「多様な子どもたちを誰一人取り残さず、質の高い学びを実現することが、まずは大切だ」と話した。

誰一人取り残さず、質の高い学びの実現が大切

 衆院選を挟み、大臣就任から1カ月が経過した阿部文科相。今後、任期中に次期学習指導要領に向けた中教審への諮問が行われることが予想される。9月には、文部科学省の「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会」が論点整理を取りまとめ、現行の学習指導要領の評価や課題、次の学習指導要領に向けたポイントを整理している。

 この論点整理を踏まえ、次期学習指導要領に向けた諮問のポイントを尋ねると、阿部文科相は「論点整理では、現在の学習指導要領の理念・趣旨は現在でもおおむね妥当だという評価をいただいた。一方で課題として、教育課程の実施にあたっての負担感などについても指摘がある。私は、ここは重要な意見であると受け止めさせていただいている」と、学校現場の負担感の軽減を課題に挙げた。

 その上で、「こうしたことも含めて、検討にあたって具体的な論点を中教審の諮問で示したいと考えている。有識者検討会の論点整理の内容を踏まえて、諮問の具体的な日時や内容は今後検討させていただく」と説明した。

 また、文科相として重視したい観点として、「副大臣時代からさまざまな学校現場で、多様な子どもたちの姿や声に触れさせていただく中で、多様な子どもたちを誰一人取り残さず、質の高い学びを実現することが、まずは大切だと考えている」と強調した。

地域の専門高校を応援

 先の衆院選では比例九州ブロックから出馬したが、それまでは岡山県を地盤に人口減少が深刻な地域の課題に取り組んできたという阿部文科相。その一つとして、石破茂首相と共に「農業高校を応援する会」の設立に携わり、全国の農業高校への視察も精力的に行ってきた。

 阿部文科相は「専門高校の人づくりは地方づくり。地方に起こる産業を支える人材育成はどこで行うのか」と語り、石破政権が力を入れる地方創生に、専門高校が果たす役割は大きいと期待を寄せる。

 実際に専門高校では地域の産業などと連携した高度な探究学習に挑む実践が増えているが、その一方で少子化による生徒数減少に頭を悩ませている学校も多い。

 この課題に阿部文科相は「子ども・若者のニーズと産業界のニーズ、そして多様性がマッチしているのかという問題がある」と指摘。恐竜の化石が多数見つかっていることにちなみ、福井県立大学が恐竜学部を開設したことを例に「(子ども・若者が)どういうところに興味があって、どういう教育と研究が地域の課題解決につながるかということが(重要になる)。時代は変わってきているので、地域ごとに違うことを地域で考えていただきながら、応援できる方法があるのではないかと模索している最中だ」と、地域に根差した専門高校の可能性を語った。

教育者の顔も持つ

阿部文科相の座右の銘は、ヘレン・ケラーの「希望は人を成功に導く信仰である。希望がなければ何事も成就しない」=撮影:藤井孝良
阿部文科相の座右の銘は、ヘレン・ケラーの「希望は人を成功に導く信仰である。希望がなければ何事も成就しない」=撮影:藤井孝良

 阿部文科相は留学先の米国で博士号と看護師資格を取得し、その後は大学で教壇に立っていたこともある。大学では学生に対し、短い時間でまとまった話として相手に伝えられるよう、プレゼンテーション能力を磨くことを言い続けてきたという。

 教え子は現在、幅広い分野で活躍しているといい、「みんなそれぞれ自分の得意分野を伸ばしていくのが、その子たちにとって一番いいのだなと思っている。それを伸ばしてあげるための教育と研究だと思いながら、その子たちの好奇心をどう惹起していくか、持ち続けられるように後押しできるかをいつも考えてきた」と、教育者としての顔をのぞかせる。

 米国での留学や大学教員の経験を踏まえ、大学教育の在り方について「(大学教員が)教育も研究もやることについて、しっかり分けていくべきではないか。どっちつかずになってしまって、研究の時間も減ってしまうし、教育の質も下がっていくということが起きているのではないか。そこはもう少し、大学改革をしっかりしていかなければいけない」と指摘。「私は、入学試験よりも卒業するところをもう少し難しくした方が、学生が育つのではないかと思っている。大学に入った瞬間からしっかりと勉強する仕組みを作っていけたら」と展望を語る。

 高等教育の費用負担軽減についても「経済的な理由によって進学を諦めることがないように、給付型奨学金や授業料減免制度を拡充していく。文科省としては引き続き、高等教育の負担軽減に取り組んでいきながら、(国立大学の)運営費交付金の十分な確保に向けて全力で取り組んでいく」と意気込んだ。

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