子どもの権利保障で日弁連が声明 文科省に通知撤回求める

子どもの権利保障で日弁連が声明 文科省に通知撤回求める
日弁連の声明の趣旨を説明する子どもの権利委員会委員長の相川弁護士(左)=撮影:藤井孝良
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 国連の「世界子どもの日」であることに合わせ、日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、日本における子どもの権利の保障をさらに推進していくことを求める声明を発表した。声明では特に、子どもの権利条約の批准に際して当時の文部省が出した通知を「子どもの意見表明への支援や子どもの意見への真摯(しんし)な応答を軽視したもの」と批判し、撤回されるべきだと強調。日弁連子どもの権利委員会委員長を務める相川裕弁護士は、同日に行われた記者会見で「インクルーシブな社会を目指していく中で、一人一人が大切にされる学校になっていくのが必要だ」と強調した。

 世界子どもの日は、1954年に世界の子どもたちの相互理解と福祉の向上を目的に国連で制定され、今年で70年を迎える。声明では、2023年にこども基本法が施行されるなど、子どもの権利条約に批准してから約30年がたち、日本でもようやく子どもの権利が保障される社会の土台ができつつあると評価。一方で、子どもの自死、児童相談所による児童虐待相談対応件数、いじめ重大事態件数、不登校児童生徒数はいずれも過去最高の水準が続いており、家庭や学校で子どもの権利が十分に保障されているとは「到底言える状況にない」と指摘した。

 特に学校では、1994年に、子どもの権利条約への批准に伴い文部省が出した通知で、条約で定められている子どもの意見表明権や表現の自由に関して「学校においては、その教育目的を達成するために必要な合理的範囲内で児童生徒等に対し、指導や指示を行い、また校則を定めることができる」とされており、これが、子どもの意見表明への支援や子どもの意見への真摯な応答の重要性を軽視したものだと批判。子どもの権利保障の観点から、通知の撤回と教育関係法令やその運用の見直しが必要だとした。

 また、子どもの権利を保障するためには、その義務がある大人が子どもの権利を学び、理解しなければならないとして、教職員などへの定期的な研修を行うこと、子どもの権利に関して、政府から独立した人権機関や地方自治体の子どもの相談救済機関を設置することを求めた。

 声明の公表にあたり東京都千代田区の弁護士会館で開かれた記者会見で、相川弁護士は「学校が楽しく生きる場というよりも、受験のような、結果を求めてそこにみんなが駆り立てられるような状況になっており、それぞれの権利を尊重して伸びやかに育っていくことが難しい状況が今まであったと思う。そうした学校の在り方や教育の在り方を抜本的に変えていく必要が出てきている。子どもの問題にかかわらず、インクルーシブな社会を目指していく中で、一人一人が大切にされる学校になっていくのが必要だ。これからそういう方向に進んでいくのではないかと思っている」と話した。

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