生成AIガイドライン、改訂素案を公表 「リスク強調し過ぎ」指摘も

生成AIガイドライン、改訂素案を公表 「リスク強調し過ぎ」指摘も
学校での生成AIガイドライン活用を巡って意見が交わされた検討会議=撮影:山田博史(オンラインで取材)
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 学校現場での生成AI利活用のガイドライン改訂に向けて議論している文部科学省の検討会議(座長・石川正俊東京理科大学学長)の6回目の会合が11月26日、オンラインで開かれ、ガイドラインの素案が初めて示された。素案では、基本的な考え方として、学校現場でもAI利用の基本原則とされる「人間中心の原則」を打ち出し、使い方によって有用な道具になり得るとした上で、教職員や児童生徒が利活用する場面での留意事項などが示された。これについて委員からは、学校現場での利活用について懸念やリスクなど留意点を強調した記述が先行し過ぎるとして、「まずメリットを記述した上でリスク面を示す流れにすべきだ」などとの意見が相次いだ。

 学校現場での生成AI利活用を巡っては、昨年7月に暫定的なガイドラインがまとめられたが、生成AIによる社会の変革が急速に進む中、改訂に向けた議論が進められている。同会議では5回の会合を開いて有識者へのヒアリングなどを行っており、これまでの議論を踏まえて初めて素案がまとめられた。

 ガイドラインの素案では、基本的な考え方として、内閣府が2019年に決定した「人間中心のAI社会原則」を踏まえ、生成AIは学校現場でも使い方によって可能性を広げてくれる有用な道具となり得るものとして、教育活動に効果的か否かを確認した上で利活用すべきであるとしている。また、生成AIがさらに社会生活に組み込まれることを念頭に置いて情報活用能力の育成を一層充実させていく必要があると指摘している。

 その上で、「学校現場で留意すべきポイント」という章を設け、教職員や児童生徒が利活用する場面の留意事項として、▽安全性を考慮した適正利用▽情報セキュリティーの確保▽個人情報やプライバシー、著作権の保護▽公平性の確保▽透明性の確保、関係者への説明責任――の5つを示した。

 教職員が利活用する場面では、内容の適切性を判断できる範囲で利用する前提で、校務での利活用は有用であると考えられるとしている。また、児童生徒が利活用する場面については、発達段階や情報活用能力の育成状況に十分留意して懸念やリスクに対策を講じた上で利活用を検討すべきとし、「特に小学校段階の児童に直接利活用させることには慎重な対応を取る必要がある」と記述している。

 こうした内容に対し、委員からは、留意事項が先行して現場の教員が積極的に利活用する気にならないのではないかなどと危惧する声が相次いだ。森田充委員(茨城県つくば市教育長)は「現場の立場から読むと懸念点や留意点の分量が多く、生成AIを使ってみたいというわくわく感が足りない。基本的な考え方で学びの充実につながる点を示した上で留意点を押さえるという流れにしないと、生成AIの利活用を抑えることになる印象がある」と指摘した。

 また、小学校段階の利活用について慎重な表現をしたことについて、実際に小学生への授業で生成AIを利活用する委員から指摘が相次いだ。NPO法人みんなのコードの利根川裕太代表理事は「実際に現場での事例を見ても有用であり、禁止に近い書きぶりは適切ではない。削除していただくのがいいと考える」と述べた。鈴木秀樹委員(東京学芸大学附属小金井小学校教諭)も「『慎重な対応』という表現が回数を制限と捉えられると完全な誤りで、小学生こそたくさん経験を積まないと正しい理解を得られない。表現を変えるか削除する方がいいと思う」と指摘した。

 会合では他にも、生成AIに詳しくない教員には読みづらい表現もあるとして、可読性を高める工夫をしてほしいと要望する声もあり、委員からの指摘を踏まえて次回に改めて素案を練り直した改訂案が示されることになった。

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