「昼間の学級に先んじた対応求められる」 全国夜間中学校研究大会

「昼間の学級に先んじた対応求められる」 全国夜間中学校研究大会
多様化する生徒のニーズへの対応が議論された全国夜間中学校研究大会=撮影:山田博史
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 全国の夜間中学の教員らが授業の実践報告などを通して交流する全国夜間中学校研究大会が12月5日と6日の2日間、東京都内で開かれた。夜間中学を巡っては全国的に設置が進む一方で、外国籍の生徒や不登校経験のある生徒たちが学ぶ場としてニーズが高まり、教員不足などが課題となっている。大会では授業の改善とともに、多様な悩みを抱える生徒にどう向き合うかなど、分科会などを通して教員同士で議論を深めた。

 この研究大会は毎年実施されており、今回で70回目。全国の夜間中学の教員など約500人が参加した。初めに全国夜間中学校研究会会長で大阪市立東生野中学校の川田浩二校長が「2020年の国勢調査では全国で少なくとも90万人の義務教育未修了者が存在し、基本的人権に関わる大きな課題が明らかになった。近年の夜間中学校は中学校の未卒業者のみならず、不登校で十分な教育を受けられないまま卒業した方や、本国で義務教育を受けていない外国籍の方への教育などさまざまな役割を担っている。大会を通じて現状と課題を認識するとともに、希望も確認したい」とあいさつした。

 夜間中学を巡っては、16年に成立した教育機会確保法をきっかけに全国で設置が進み、文部科学省は各都道府県と政令市に少なくとも1校以上の設置を目標に掲げている。同省によると今年10月現在で32都道府県に53校が設置されており、来年4月にも9校の設置が予定されている。一方で、さまざまな国籍を持つ生徒への日本語指導や発達障害のある生徒への対応など、一人一人の生徒が抱える困難への対応で教員不足も深刻化しているという。

 こうした状況の中で開かれた大会で、主題提起に立った大会事務局長で東京都江戸川区立小松川中学校夜間学級の大屋博文副校長は「夜間中学はこの10年で学ぶ意欲のある生徒が学べる環境が整い始め、授業形態もICT機器を最大限に活用した教育へと大きな転換が図られた。こうした中で教員が一番力を注がなければいけないことは、教員の力量を高めて生徒に還元することであり、学習者中心の授業を実施することだ」などと強調し、大会を通して授業改善などに役立ててほしいと呼び掛けた。

 大会は2日間で、「教育内容」「学校行事」「多文化共生教育」など領域別の分科会や「日本語」「国語」など教科別の分科会が開かれ、それぞれで発表者の報告を受けて意見交換などが行われた。また、夜間中学の歴史などに詳しい研究者からは、これほど多様な生徒がいた時代はかつてなかったとの報告があり、昼間の学級に先んじた対応が夜間中学に求められていると指摘された。

 一方、大会では夜間中学に通う生徒3人が体験発表し、奈良県天理市立北中学校で学ぶ金燕珍さん(65)は、「名前の話」と題して発表した。金さんは中国・広州の出身で、「ガム・インヂャン」が本来の名前の読み方だが、入学当初は北京語読みで「ジン・イェンジェン」と呼ばれていたという。しかし、担任教員から「広東語では何と読むの」と聞かれたときに本来の読み方を話したことをきっかけに、みんなから「ガムさん」と呼ばれるようになった経緯を話し、「親がつけてくれた名前で呼ばれるようになってよかった。学校で大根もちをつくったら、みんながおいしいといってくれる。これからも私の文化を伝えていきたい」などと、夜間中学で学んでいる様子を語った。

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