教職調整額引き上げは条件なしで 自民党特命委が緊急決議

教職調整額引き上げは条件なしで 自民党特命委が緊急決議
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 公立学校の教師の処遇改善を巡り、自民党の「令和の教育人材確保に関する特命委員会」は12月10日、教師を取り巻く環境整備のための教育予算確保に関する緊急決議を、石破茂首相に手渡した。時間外在校等時間の縮減を条件に教職調整額の段階的な引き上げを行うとした財務省の提案に対し、「時間外在校等時間の縮減は教職員定数の改善とあわせて実施することが不可欠であり、教職調整額の引き上げに条件を付けるべきではない」とくぎを刺し、将来的に教職調整額に代わって時間外勤務手当(残業代)を支払う形にすべきでないとした。

 特命委では5月にも緊急決議を取りまとめており、学校における働き方改革のさらなる加速化、教師の処遇改善、学校の指導・運営体制の充実、教師の育成支援を一体的に推進し、教職調整額を少なくとも10%以上に引き上げることを要望。「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太の方針)に反映されている。

 今回の緊急決議では、時間外在校等時間の縮減を確認した上で教職調整額を段階的に引き上げていき、教職調整額が10%に達した際に、所定外の勤務時間に見合う手当への移行を検討するとした財務省案は、特命委が5月に出した緊急決議とは異なる案だとした。

 その上で財務省案は、教職員定数の改善などの支援なしに時間外在校等時間の縮減を給与改善の条件とすれば、本来必要な教育活動まで制限され、子どもたちに必要な教育指導が行われなくなるなど、学校教育の質の低下につながると問題視。

 「時間外在校等時間の縮減は教職員定数の改善とあわせて実施することが不可欠であり、教職調整額の引き上げに条件を付けるべきではない」と強調した。

 また、学校ごとに労働基準法に基づくいわゆる時間外・休日労働に関する労使協定(36協定)を締結して、残業代を支給することは、どこまでが職務なのか切り分けが難しい中で、管理職と教員の判断に齟齬(そご)が生じ、管理コストの増大と現場の混乱を招くとも指摘。

 財務省案では、この場合の時間外勤務手当の国庫負担に上限を設けることになっているが、そうなれば自治体に負担を転嫁することになり、財政力の違いによる教育格差が生まれかねないと懸念した。

 これらを踏まえ、緊急提言では▽教員の職務の特殊性などを踏まえれば、残業代を支給する方法に移行すべきではない▽教職調整額の少なくとも10%以上への引き上げは、時間外在校等時間の縮減などの条件を付けることなく、2025年度から確実に実施する▽長時間勤務の縮減のためのインセンティブは、給与制度で行うべきではない▽当面の時間外在校等時間の目標を国において明確に定める――などを求めた。

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