タブレット受験、障害体験アトラクション 肢体不自由の生徒が提言

 タブレット受験、障害体験アトラクション 肢体不自由の生徒が提言
発表した生徒をつなぎ、オンライン交流会も開かれた=撮影:水野拓昌
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 特別支援学校の肢体不自由教育部門で学ぶ高等部の生徒によるプレゼンテーションの全国大会「ミラコン~未来を見通すコンテスト~第7回プレゼンカップ全国大会」のファイナルステージが12月11日、心身障害児総合医療療育センター療育研修所(東京都板橋区)で開かれ、全国7ブロックの地方大会を勝ち抜いた生徒たちが未来への提言を発表した。生徒たちは動画やイラストなども活用して斬新なアイデアを披露した。

 同大会は、全国特別支援学校肢体不自由教育校長会と、日本肢体不自由児協会の共催。2018年から始まり、7回目を迎えた今大会は全国32校70人の生徒が応募し、この日は各ブロックの代表に選ばれた7人が、オンラインでプレゼンテーションに臨んだ。

オンラインでのプレゼンテーションを審査員たちが見守った=撮影:水野拓昌
オンラインでのプレゼンテーションを審査員たちが見守った=撮影:水野拓昌

 審査の結果、最優秀の文部科学大臣賞に輝いたのは長崎県立諫早特別支援学校高等部3年の森山大誠(ひろまさ)さん。自身の障害の特性として文字を書くことに時間がかかるが、タブレット端末を利用した学習では素早く入力でき、「自分一人でできることが増え、学習の質が各段に上がった。タブレット受験が広がれば、自分のような障害を持つ人も勉強の機会が増え、受けられる試験の幅が広がる」と訴えた。ただ、課題として、公正のため予測変換をリセットする設定を簡単にすることや数式入力の対応を上げ、「試験モード」の必要性を提言。「将来、アプリの開発に携わり、問題を解決したい。ICTにはもっと可能性があると感じた」と強調し、審査員からも具体的な提言と評価された。

 また、優秀賞に選ばれた愛知県立港特別支援学校高等部1年の太田結人(ゆうと)さんは「おむつ廃棄で排出される二酸化炭素(CO2)の削減」をテーマに発表。「障害者に関わる課題は私たち自身の手で解決したい」として、同校のおむつ廃棄量や世界の二酸化炭素排出量などデータを基に展開し、焼却以外の廃棄方法やおむつの代替手段を考察した。地元企業との連携にも触れ、おむつの代替手段として「集尿器を試してほしい」との結論を示し、「持続可能の社会のため、自分たちが行動を起こしていく必要がある」と訴えた。

 東京都立城南特別支援学校高等部3年のノイズ・ローラ萌生(めい)菊池さんは「車いすでの移動体験だけで身体障害を体験したとは思ってほしくない」と、身体障害を体験するアトラクションを提案。ウォークスルー型のお化け屋敷で、主人公は何かにとりつかれ、体が思うように動かなくなり、神社におはらいに行くとゲームクリア、といったストーリーを作った。車いす移動や文字盤での会話、全身に重りをつける、手と体をゴムバンドでつなげるといったハンディや、通行人に助けを求め、神社の場所を聞いたり、通行を手伝ってもらったりする課題、さらに、人間のように見える幽霊がハンディを追加するという設定を考案。「障害を体験しているという実感がないうちに、アトラクションを通して楽しみながら体験した方がより深く印象に残る」と説明。表現力賞と、観客の投票で決まる観客賞に輝いた。

 このほか、青森県立青森第一高等養護学校3年の髙橋來華(きか)さんは、楽しかった関西への修学旅行で買い物をし過ぎた経験から、ノック式ボールペンのような操作で車いすの肘掛け部分から棒が出てきて荷物を掛けられるというアイデアを発表。課題も示し、解決することで実現に向かうと期待を込めた。

 京都府立丹波支援学校高等部3年の足立幸気(こうき)さんは、肢体不自由があり、周囲から危険に思われるが、専用器具などを使って安全基準をクリアできるとし、安全に仕事ができることを証明する「安全バッジ」を考案。「将来、運送業で働きたい。誰もが安心して自分のやりたいことをできる社会にしていきましょう」と呼び掛けた。

 審査結果発表前には、各地の生徒を画面上で結んだオンライン交流会が開かれ、それぞれの学校自慢や将来の目標を披露し合った。

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