部活動の地域移行「指導者」「場所」の課題山積み JSPO調査

部活動の地域移行「指導者」「場所」の課題山積み JSPO調査
ミーティングの冒頭、あいさつするJSPOの森岡専務理事。都道府県加盟団体の78人が参加した=オンラインにて取材
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 地域移行が進められている公立中学校の休日の部活動に関し、指導者の確保や有資格者による指導、活動場所の利便性が「重要なポイント」である一方、それらが軒並み実現困難な状況にあることが、公益財団法人「日本スポーツ協会」(JSPO)の実態調査で、12月13日までに明らかになった。

 調査は9月3日から10月18日に実施。各都道府県のJSPO加盟47団体のうち、45団体から回答を得た。結果は運動部活動改革に向けた、JSPO加盟団体のオンラインミーティングで公表された。

 部活動改革にあたり重要になるポイント(複数回答)を尋ねると、35団体が「指導者の確保(量的課題)」、次いで34団体が「指導者の質の向上(有資格者による指導)」と回答。質量ともに指導者の確保に苦心する実態が浮き彫りになった。さらに30団体が「活動場所の利便性」と答え、移動手段とともに活動場所の確保も喫緊の課題となっていることが分かった。

 都道府県での指導者の育成に関する実態については、25.3%が「資格取得者をスポーツ活動現場に配置していくことが難しい」と回答。22.2%が「有資格者の数が少ない」、20.2%が「(指導者の)配置を必要としている現場を把握できていない」、19.2%が「有資格者を養成する資源(予算、場所、時間、スタッフ等)が足りない」と続き、ほぼ同じ割合で回答が並んだ。JSPOの担当者は「有資格者にはすでに指導のフィールドがあり、新たな部活動の対応は困難であることの反映」と分析する。

 これらの課題への対応として、加盟団体から「指導者の質の向上を目指した研修会や人材育成の実施」「JSPO後任の指導者を、各現場にいかに結び付けていくかを考察中」などの意見が上がった。

 その他の課題としては「責任の所在の明確化」「受け皿となるクラブチームと学校をつなげるコーディネーターの把握が困難」「個人情報の取り扱いにおいて、指導者情報の行政への提供が不可能」といった意見のほか、急激な少子化と人口減少に伴い、「地域のスポーツ少年団でJSPOに加盟する団体は減少傾向にあり、部活動の受け皿になることは困難」との声もあった。また「県内の市町村間で地域移行の進捗(しんちょく)状況に差がある」「移行後の受け皿となる活動団体間で意識や進捗状況の差が拡大している」などと、地域間格差、団体間格差への指摘も見られた。

 こうした現状を受けJSPOでは、スポーツ少年団と総合型地域スポーツ活動クラブとの連携体制の構築を提唱。活動場所の確保や財源不足といった両者の共通課題への対応が可能になり、子どもたちがスポーツを行う機会も増えるとして「事務局を設置し、連携促進会議を重ねている」と報告した。また、全競技に対応可能なスポーツの基礎知識を身に付け、指導や運営に当たる有資格者「スポーツコーチングリーダー」の育成も進めているという。

 部活動改革を巡っては、国は2023~25年度までの3年間を「改革推進期間」に設定。文部科学省の調査では休日の部活動に関し、全部活動のうち54%が地域移行を行う予定としている。平日の部活動についても、25年度までに全体の31%の地域連携や移行を見込んでいる。

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