在日米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)にほど近い緑ヶ丘保育園、普天間第二小学校で相次ぎ発生した米軍機の部品落下事故から、12月で7年がたつ。2017年の事故発生当時、同園や同小に子どもを通わせていた保護者らでつくる団体「#コドソラ(こどもの空を守る)」は12月12日、米軍機の学校上空での飛行禁止などを求め、政府への要請を行った。要請は今年で6度目。代表の与那城千恵美さんは「今なお米軍機は学校の上空を飛び交い、水や校庭の土の汚染も発覚するなど状況は悪化している」と沖縄の過酷な現状を伝え、「子どもたちが安全に、安心して学校へ通い、教育を受ける権利が侵害されている」として、文部科学省や防衛省をはじめ各省庁の担当者に陳情書を手渡した。
陳情書では①米軍機の飛行ルート順守と学校上空の飛行禁止②普天間第二小でのPFOS土壌汚染の改善に向けた迅速な取り組み③普天間基地を離発着するオスプレイの飛行禁止――を求めている。
学校上空での飛行禁止の求めに対し、防衛省の担当者は「場周経路(標準の飛行ルート)に沿った飛行形跡が確認されている」と述べ、「改善が認められる」との考えを示した。これに対し与那城さんは「現在も保育園や小学校の上空を頻繁に飛んでいる」と主張、園や学校上空の航跡データや映像記録の開示を求めたが、防衛省は「米軍の情報保全や飛行の安全面への影響」を理由に拒否した。
要請に同席した沖縄県選出の伊波洋一参院議員は「普天間飛行場は墜落の危険性の高いクリアゾーン(利用禁止区域)に、学校施設や住宅密集地がある。クリアゾーンが守られていない基地は世界で唯一、普天間だけ」と説明。その上で「緑ヶ丘保育園も普天間第二小も、08年の日米合同委員会で定められた場周経路から随分外れた場所にある。それでも日常的に戦闘機が飛び交い、逃げるためのシェルターが作られ、騒音で授業が中断するなど学校環境は変わっていない」として、「安全・安心な学校のために実施した取り組みと成果」を尋ねたが、文科省は「きちんと受け止め対応していくべきだと考えている。現場とコミュニケーションを取り連携していく」との返答にとどまった。
PFOSの土壌汚染については22年12月、普天間第二小の校庭から高い値で検出されたことが県の調査で明らかになっている。これに対する環境改善の求めに対し、文科省は「環境管理を担うのは一義的には設置者」と回答、防衛省は「PFOSはさまざまな場所で使用されており、米軍基地との因果関係が判明していない。土壌の法的基準値もない」と述べ、改善の道筋は見えなかった。
要請後に行われた報告会で、メンバーの宮城智子さんは「この7年間、子どもたちの安全を求めているのに改善されない。署名や陳情を呼び掛けると『政治的』だといって敬遠される。もどかしい気持ち、悔しい思いがある」と吐露した。与那城さんは「子どもたちは事故後、米軍機を『飛ばさないで』と言っていたのに、今は『何をやっても変わらない』と言っている。大人がそう言わせてしまっている」と子どもたちの変化について語り、「解決のために力を貸してほしい」と全国の人々に向けて呼び掛けた。
米軍は17年の事故で落下した部品について、普天間飛行場所属の大型輸送ヘリCH53の部品であることを認める一方、飛行中の落下ではないとしている。そのため事故後、同園や被害を訴える保護者のSNSに「反日活動家」「子どもをダシに基地反対するな」などの誹謗中傷が殺到した。今回の要請についても与那城さんのXには「匿名のアカウントから『自作自演』との返信が来た」という。
報告会を終えた与那城さんは、本紙の取材に「日本は平和だと言われているけれど、安全・安心に暮らし学校に通う子どもたちがいる一方で、沖縄の子どもたちは危険にさらされている。この状況が本当に平和と言えるのか。学校の先生たちも一緒に考えてほしい」と訴えた。