公共図書館と学校図書館の運営充実へ 有識者会議が初会合

公共図書館と学校図書館の運営充実へ 有識者会議が初会合
公共図書館・学校図書館の運営の充実に向けて議論を始めた有識者会議の初会合=オンラインで取材
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 人口減少やデジタル化などが進む中で、多様な読書の機会を確保していくため、文部科学省は12月17日、公共図書館と学校図書館を横断した読書環境の充実などを検討する有識者会議の初会合を開いた。GIGAスクール構想の進展などを踏まえ、学校図書館や公共図書館での効果的なデジタル活用の在り方、デジタル活用に対応するための司書教諭、学校司書の役割・専門性などを議論。学校司書の処遇の問題なども視野に入れる。

 日本の読書環境を巡っては、公共図書館は増加し、学校図書館の整備も進んでいるが、子どもも成人も月に1冊も本を読まない「不読率」は上昇傾向にある。人口減少や少子化で地域の書店がなくなったり、電子書籍が普及したりして、読書環境は大きく変化している。

 また、2019年に読書バリアフリー法が施行され、障害のある人へのアクセシビリティーの確保も課題となっている。

 こうした状況を踏まえ、有識者会議では家庭や地域、学校などが連携・協力し、社会全体で読書環境を充実させていくため、公共図書館・学校図書館の課題を分析し、運営の充実に向けて検討する。委員は学校関係者、図書館関係者、出版関係者らで構成され、座長には秋田喜代美・学習院大学文学部教授が就いた。

 初会合で示された論点案では、デジタル社会への対応や多様な人々のための読書環境の整備に加え、学習指導要領に基づく個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実、主体的・対話的で深い学びの実現など、これからの子どもの学びを支える読書環境の充実が盛り込まれた。

 さらに、図書館と学校図書館、関係機関との連携や処遇の問題も含めた学校司書、司書の配置充実、読書推進人材の育成・活用などもある。

 初会合では、各委員がそれぞれの視点から公共図書館・学校図書館の在り方や読書環境について意見交換を行った。

 奈須正裕副座長(上智大学総合人間科学部教育学科教授)は「GIGA端末の導入もあり、学校の学習環境はデジタル学習基盤をベースに、学校、カリキュラム、教室環境、授業、教師の仕事の在り方を抜本的に問い直して再構築することが進むだろう。その中でデジタル教科書の導入も段階的に進み、これはかなり(子どもの読書環境に)影響があると思う」と指摘。アナログとデジタルの学びの環境を有機的に接合していく中で、図書館をどう位置付けていくか議論していく必要があるとの認識を示した。

 多様な人々の読書へのアクセシビリティーに関して、野口武悟委員(専修大学文学部教授)は「特別支援学校はもちろんのこと、通常の学校やクラスの中で学んでいる支援が必要な子どもたちが、学校の図書館でアクセシブルな書籍などを利用できる環境をどう充実させていくかが非常に大切だ。その際に、障害のある子だけではなくて日本語指導の必要な子たちも増えてきているので、易しい日本語や多言語の資料へのアクセスを、紙ベースだけではなくてデジタルも含めて利用できる環境をどう充実させていくかも重要になる」と問題提起した。

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