児童生徒の自殺の背景調査 「学校要因以外」の扱い論点に

児童生徒の自殺の背景調査 「学校要因以外」の扱い論点に
児童生徒の自殺の背景調査を巡り意見が交わされた有識者会議=オンラインで取材
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 児童生徒の自殺防止の取り組みを検討する文部科学省の有識者会議が12月18日、オンラインで開かれ、子どもの自殺が起きたときに学校などが行う背景調査の在り方を巡って意見が交わされた。この中で、自殺の詳しい要因分析などを進める「詳細調査」の対象について、文科省が学校要因でないケースを対象から外すことも含めた見直しを論点として示したのに対し、委員からは「学校に来ていないケースも含めて、詳細調査の対象は幅広に取った方がいいのではないか」といった異論が相次いだ。

 児童生徒の自殺が起きたときの対応を巡っては、2014年に「背景調査の指針(改訂版)」が策定され、全件について学校主体で事実関係を整理する「基本調査」を行い、学校生活に関係する要素が疑われる場合や遺族の要望がある場合は、外部専門家を加えた「詳細調査」に移行することが定められている。

 しかし、自殺者数が過去最多水準で推移する中、文科省の調査によると、「詳細調査」について遺族に説明した件数は全体の約6割に、実際に移行した件数は全体の約1割にとどまっていた。今年8月にいじめの重大事態調査ガイドラインが見直されたこともあり、背景調査の指針改訂に向けて検討されることになった。

 会議では、文科省側から指針の改訂に向けた論点が示された。この中では、背景調査の在り方について、いじめ重大事態調査ガイドラインで「平時からの備え」が強調されたことを踏まえて、背景調査の指針にも同様に記載することや、詳細調査についての遺族への説明が6割にとどまっていることから、口頭での説明に加えて文書を提示して意向確認することなどが論点として示された。

 さらに詳細調査については、自殺の要因が多様化、複雑化する中、学校生活に関係する要素(いじめ、体罰など)や遺族の要望がある場合は実施するものの、家庭要因や本人健康要因など学校要因以外である場合、対象から外すことを含めて見直し・整理すべきではないかとの論点も示した。

 これについては委員から異論が相次ぎ、松本俊彦委員(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部長)は「学校に来ていなくても、生きづらさを抱える子に教育の機会を提供する方法はなかったかを皆で考える意味もあり、詳細対象は幅広にとった方がよく、子どものためにそれぞれ何ができるかの議論に結び付きやすいのではないか」と指摘した。

 また、新井肇委員(関西外国語大学外国語学部教授)は「本当は全件調査が望ましいのが大前提で、学校要因がないからとか遺族が望まないから詳細調査をやれないとなっていることを、どう考えるかが議題となるのではないか。学校に来ている以上、生活に何らかの影響を受けているわけで、どこまでの範囲を拾っていくかを明確にしていくことはいいと思う」と述べた。

 同会議は、年度内をめどに指針改訂の方向性を示す方針で、次回も引き続き論点を整理して議論を続ける。

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