教育データの効果的な利活用について検討している文部科学省の有識者会議(座長・堀田龍也東京学芸大学教職大学院教授)の第27回会合が12月19日、オンラインで開かれ、今年度の議論まとめ案が示された。全国の約8割の自治体が教育データ利活用を教育政策の重点施策に位置付ける中、デジタル学習基盤の整備に向けて自治体が主体的に必要なシステムなどを選択して活用することが重要だと強調し、環境整備に向けて国や民間企業が支援する必要性を打ち出した。今後さらに検討を進めて、年度内をめどに議論まとめを公表する見通し。
同会議では、教育データの利活用について、誰一人取り残すことなく、全ての子どもたちの力を最大限に引き出すことを目的の中心に据えて、効果的な利活用の促進に向けた議論を進めてきた。今年度は主に教育データ利活用を持続可能な取り組みとする観点から、国や自治体、学校、民間企業の役割分担などについて検討された。
同日示された議論まとめ案では、教育データ利活用のメリットを最大限発揮させるためには、「自治体が実態やニーズに応じて主体的に学習リソース等を選択し、創意工夫をしながら学習リソース等で取得するデータを連携し、日常的に活用していくことが重要である」と明記された。
その上で自治体の選択を可能にするためにも、ベンダーロックイン(特定のベンダー以外のサービスへの移行が困難となる状況)などが生じないように公平で健全な環境をつくることや、多様な展開を可能とするため技術指針の更新を進めることが必要だと示した。
また、国や民間企業の果たすべき役割として、国は自治体が主体的に選択しやすいモデル例の提示や自治体が実装する際の支援(実証事業や横展開)、費用支援の在り方を巡る検討が必要だと打ち出した。民間企業については、製品・サービスの高度なパッケージ化はせずに、自由に組み合わせて活用できるパーツの多様な提供や、子どもの力を最大限引き出すことに役立つ新たなシステムの開発などが期待されるとした。
これについて、出席した各委員が意見を述べた。讃井康智委員(ライフイズテック㈱取締役)は「自治体で主体的に判断するにあたって、今使っている学習リソースを続けて使用できるように、接続拒否の禁止や学習eポータル間のデータ移行の保障を明記したことはありがたい。一方で同じサービスでも代理販売と直販で費用負担が異なるなどの事情もあり、ビジネスモデルの制限も書く必要があるのではないか」と問題提起した。
春山正実委員(全国市町村教育委員会連合会事務局長)は「システムに関わる内容に重点が置かれ、現場で利活用する視点が薄いと感じる。データ利活用は教師の負担軽減や学習指導に生かせるものであり、いかに現場で活用できるかも議論したい」と要望した。
最後に堀田座長が「自治体がどんな学習環境基盤にするかを主体的に決めることが重要である一方、それを国や民間がどう支援できるかについて整理や課題が残っており、引き続き議論したい」と述べた。