東京都港区は今年4月に始まる新年度から、全区立小学校の1年生に「プレクラス制度」を導入する。入学当初の1カ月のクラス編制をプレクラス(仮の学級)として児童の状況を把握し、児童の特性などを考慮して5月に正式なクラスを編制する。区教育委員会によると、全区立小学校での導入は都内で初めて。入学当初の児童の特性や発達段階の把握はどの学校でも課題となっているが、区教委はプレクラス制度導入で、きめ細かな指導ができ、学級運営の安定につながると期待している。
区教委によると、21年度から2校で先行して実施しており、成果があったとして区立小学校19校全校での導入を決めた。保育園、幼稚園などからの情報によって4月末までのプレクラスを編制。この1カ月間は、学級担任を固定せず、1年生を担当する複数の教員の目で児童の実態把握に努める。教員たちが実際に児童を見て把握した状況を基に5月からのクラスを編制する。こうしたプレクラス期間の進め方や、5月1日を基準としている正式クラスの編制時期は各学校の裁量で運用できる。
名簿、座席表の作成やロッカーの割り振りなど4、5月の事務作業は増えることになるが、エデュケーション・アシスタント(副担任相当の業務を担う支援員)、スクール・サポート・スタッフ(教員業務支援員)といった人材を活用して担任教員の負担を軽減。また、1学年1学級の単学級学校では、クラスをグループに分けるなど工夫して制度を運用することを想定しているという。
港区では、インターナショナルスクールからの転入や、保護者の転勤などによる海外からの転入が多いという事情があり、学校が地元の保育園、幼稚園から得た情報だけでは、児童の特性、発達段階を明確に把握することが難しくなってきた。
区教委では、実際に教員の目で児童の状況をみてから正式のクラスを編制することで、学級運営の安定につながると期待する。また、若い教員が増え、経験の浅い教員が1年生を担任するケースもあるが、新制度では学年を担当する教員たちの組織的なフォローがあり、若手教員の成長を支援できるとみている。児童にとっても、担任以外の教員との関わりができ、相談しやすい環境ができるという。
区教委は「子どもたちには学校で楽しく過ごしてもらいたい。年度当初の学校の負担は増えることになるが、ある程度、子どもたちの状況を理解した上でクラスを編制した方が、残り11カ月、クラス運営は安定する。子どもにとっても教員にとっても良い方向になる」と新制度の狙いを説明する。4月からの実施に向け、校長会で先行事例での成果など情報共有を進めていくという。