コロナ禍以降、各学校ではオンラインで、海外や国内の学校や識者とつないだ授業が行われるようになった。千葉県佐倉市立寺崎小学校(古川昌美校長、児童486人)の6年生も、4年次からカナダ在住のネーチャーガイドの田中康一さんと交流を深めてきた。1月10日には、一時帰国中の田中さんがサプライズで同校を訪れ、もうすぐ卒業を控える6年生にメッセージを伝えた。
カナダ・アルバータ州にあるバンフ国立公園でネーチャーガイドを務める田中さん(通称ロッキーさん)は、コロナ禍以降、全国各地の学校とオンライン授業を実施。カナダの自然や文化など、さまざまなテーマで、これまで152コマのオンライン授業を行ってきた。
同校の6年生は、4年次から毎年、ロッキーさんとオンラインでカナダのことを学んできた。この日の3時間目も、いつものようにオンライン授業だと思っていた6年生2クラスの児童たちは、音楽室に集まり、約1年ぶりの交流を心待ちにしていた。
子どもたちにロッキーさんのことを覚えているか尋ねてみると、「覚えているよ! カナダではフランス語も使うことや、お湯を空中にまくと一瞬で凍っちゃう話とか、すごく楽しかった」と振り返った。自主学習でカナダのことをまとめている子もいるそうだ。
授業の冒頭は、オンラインでロッキーさんが登場。子どもたちは画面越しにうれしそうに手を振っている。すると、次の瞬間、ロッキーさん本人が音楽室に現れた。
「えー! 本物だー!」と目を白黒させながらも、大喜びの子どもたち。サプライズは大成功だった。
3年間、交流を続けてきた子どもたちに、改めて伝えたいメッセージがあったロッキーさん。子どもたちに4年生と5年生の時のオンライン授業で話した「合言葉」を覚えているか尋ねると、「You rock!」と声が上がる。
この「You rock!」は、ロッキーさんがカナダに渡った当初、英語に自信が持てずにいたとき、カナダの人からよく掛けられた言葉だった。ロッキーさんは最初、その意味が分からなかったが、いつもその言葉を掛けてくれる人たちはすごくいい顔をしながら言ってくれる。ある時、その意味を聞いたところ、「あなたは最高だね!」というような、最高の褒め言葉だということが分かった。
「この言葉の意味を知って、英語が好きになったし、勇気をもらった」とロッキーさんは振り返り、「『You rock!』と言うためには、その人のいいところをよく見ていないといけない。みんなも友達や家族の『You rock!』なところを見つけて、伝え合ってほしい」と話した。
カナダについて「世界中のいろいろなところから人が来ている国。言葉も、考え方も、食べ物も、肌の色も違う。『カナダってどんな国?』と聞かれたら、違うことに『いいね! You rock!』と言える国だと答える」とロッキーさん。「違うってかっこいい、違うってうらやましい、そう考えていいということを教えてくれた」と思いを述べた。
ロッキーさんとのオンライン授業を企画してきた藤田文子教諭は「コロナ禍に緊急事態宣言が出されて、子どもたちが学校にいない時期を経験した。当時は終わりの見えない日々で、子どもたちがいない学校はつまらなかった。初めて教員を辞めたいと思ったぐらい。そんな時、助けてくれたのが、オンラインでのつながりだった。コロナが明けて、オンラインでつながっていた人とリアルに会えた時は、本当にうれしかった。それをみんなにも味わってほしかった」と子どもたちに語り掛けた。
ロッキーさんとの対話を楽しんだ子どもたち。「オンラインでの授業も楽しかったけれど、リアルで話を聞いた方が、よりロッキーさんの思いや言葉が伝わってきた」「ロッキーさんが自分たちの近くに来て、動きながらやりとりできてうれしかった」と笑顔を見せた。