暴言や長時間拘束…教職員の9.7%が「カスハラ」経験 三重県教委

暴言や長時間拘束…教職員の9.7%が「カスハラ」経験 三重県教委
iStock.com/mapo
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 顧客による理不尽な要求、悪質なクレーム「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が社会問題となる中、学校現場でも保護者や地域住民からの多様な要求、苦情への対応に苦慮している実態があるとして、三重県教育委員会はこのほど、公立学校の全教職員を対象にしたカスハラに関するアンケートを実施し、結果を公表した。カスハラを受けたという回答は1割程度だったが、頻繁に対応を迫られたり、長時間対応を強いられたりすることもあり、心身の不調につながるケースがあったことも浮き彫りになった。県教委は対応強化を図っていくという。

 アンケートは三重県教委として初めて実施。2024年11月11~25日、県内の公立学校教職員、県教委職員の計約1万5000人を対象とし、そのうち約25%に当たる3703人から回答があった。結果は同年12月、県議会常任委員会で報告された。

 「23年度にカスハラを受けたことがあるか」という設問には358人(9.7%)が「ある」と回答。カスハラを行った相手は保護者が308人(86.0%)と圧倒的に多く、次いで保護者以外の地域住民が76人(21.2%)だった。

 対応回数は▽1~2回 122人(34.1%)▽3~5回 120人(33.5%)▽6~10回 59人(16.5%)▽11回以上 57人(15.9%)――で、対応の平均時間は▽5分以下 17人(4.7%)▽6~10分 21人(5.9%)▽11~30分 64人(17.9%)▽31~60分133人 (37.2%)▽61分以上 123人(34.4%)――だった。頻繁に対応を迫られるケースや長時間対応を強いられるケースも多いという実態が浮き彫りになっている。

 受けたカスハラのタイプは▽大きな怒鳴り声や侮辱発言などの「暴言」 241人(67.3%)▽長時間の電話、居座りなどの「時間拘束型」 214人(59.8%)▽制度上対応できないことや社会通念に照らし不当な要求といった「過度な要求」 181人(50.6%)▽相手を怖がらせる発言・行為、マスコミに言うといった脅しなどの「威嚇・脅迫」 150人(41.9%)▽繰り返し電話で問い合わせ、面会の要求などの「リピート」 135人(37.7%)――といった回答が多かった。

 また、その影響については▽「怒りや不満・不安を感じた」273人 (76.3%)▽「業務が逼迫(ひっぱく)し、時間外労働が生じた」 219人(61.2%)▽「仕事に対する意欲が減退した」 208人(58.1%)▽「業務のパフォーマンスが低下」 183人(51.1%)▽「眠れなくなった」 91人(25.4%)――などの回答が多く、「通院や服薬した」20人(5.6%)といった心身の不調につながる影響もみられた。

 組織的な対応として望むことは▽「保護者、地域住民に向けた啓発」 228人(63.7%)▽「電話対応の録音機能導入」 184人(51.4%)▽「カスハラの基準など明確なルール設定」 161人(45.0%)▽「定時外の電話の自動案内導入」 136人(38.0%)▽「相談体制の確立」 127人(35.5%)――などが挙がった。

 県教委は対策として、学校の危機管理マニュアルの中で「相談・苦情への対応」の留意点を周知することやPTAと協力して保護者への理解促進、学校問題解決支援員など相談しやすい態勢の拡充、弁護士など外部の専門家の力を借りられるような態勢の拡充といった取り組みを強化するという。

 担当者は「一人で抱え込み、心身の不調につながっているケースもある。チームで対応することが重要」と指摘。県立学校では、電話対応の録音機能導入を来年度から進められないか、予算を含めて検討していくという。一方で「教育現場では一概にカスハラと決め付けられないケースもある」といった判断の難しさも抱えているという。

 県教委によると、県でカスハラ防止条例制定に向けた議論が進んでおり、教育部門の現状把握のため、アンケートを実施した。また、教員不足、教員志望者の減少を引き起こしかねないとの危機感もあり、学校運営の大きな課題との認識も強まっている。

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