教育実践などに顕著な成果をあげた教職員を表彰する2024年度の「文部科学大臣優秀教職員表彰式」が、東京大学安田講堂(東京都文京区)で1月17日に開かれた。完全な対面形式での開催は5年ぶり。記念講演には東京海洋大学名誉博士・客員教授のさかなクンが登壇し、子どもたちと海や魚への学びを深める「さかなクン探究隊」の取り組みを紹介。さかなクンは自身の経験を踏まえ、「学校の先生に楽しく、厳しく、たくさん学ばせていただいて今がある」と力を込めた。
24年度に表彰されたのは、国公私立学校を含む幼稚園・小中高校の教職員829人(国立20人、公立779人、私立30人)と59組織(国立2組織、公立56組織、私立1組織)。優秀教職員表彰は、優れた成果を上げた教職員の表彰により、意欲を高め資質能力の向上につなげることが狙い。06年から文科相による表彰を行っている。
表彰式で阿部俊子文科相は「人づくりこそ国づくり。誰一人取り残さない社会を実現するため、教員は学校現場で日々、一人一人の児童生徒に向き合っている。その力を大いに発揮してもらえるよう、教員を取り巻く環境整備の取り組みを一層進めていく」と強調した。
続いて受賞者を代表し、滋賀県竜王町立竜王中学校の古川育子教諭が「園児から中学生まで健康教育ができるよう、20年から文科省委託の『早寝早起き朝ごはん推進校事業』の取り組みを教委と共同で実施している。児童生徒から募集したオリジナルマスコットを作り、保健用紙芝居やオリジナルソングの作成にまで活用することができた。日本の将来を担う子どもたちが生涯、望ましい生活習慣を確立し、心身が健康に過ごせるよう今後も研さんに努めたい」と決意を述べた。
記念講演では、さかなクンが子どもたちと取り組む「さかなクン探究隊」の活動について紹介した。昨年9月から小学4~6年生の11人の「隊員」と共に、全7回のワークショップを実施。電池推進船の乗船体験、深海魚・ミズウオの解剖、鎌倉の海でマイクロプラスチックなど資源ごみの収集を行う「プラギョミ漁」――など、海や魚についての学びを深める探究活動を行ってきたという。
さかなクンは「子どもたちは猛者ぞろい。低利用魚を調理したり、魚のうまみを研究したり。江の島の海水濃度を自宅で再現し、飼育の難しいフグを3年間も育てた『すギョい』子どももいる。漁師さんにもらったカキの殻がポイントで、バクテリアが住み着いて水をきれいにしてくれるんだとか」と興奮ぎみに話した。
また、子ども時代を振り返って「もともと魚が好きなわけではなかった」と明かしたさかなクンは、クラスメートや恩師との出会いをきっかけに探究心が沸いた体験談を披露。「学校の先生や漁師さんがすごくかわいがってくれた。魚を通して仲良くなると、年の差がない感じになり心地よかった」ことが現在の活動につながっていると話し、「学びは宝だと強く思う」と教員らを激励した。