国立大の経営「もう限界」さらに実感 国大協総会で意見相次ぐ

国立大の経営「もう限界」さらに実感 国大協総会で意見相次ぐ
国立大学協会の総会後に記者会見する永田会長(中央)=撮影:山田博史
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 全国の国立大学などで構成する国立大学協会(国大協)の総会が1月22日、都内で開かれた。国大協は昨年6月、物価高などで国立大学の経営が圧迫され、「もう限界」との声明を出しているが、出席者からは「インフレも蓄積され、さらに悪化している」との声や、大学病院の経営悪化を訴える声が相次ぎ、永田恭介会長(筑波大学長)は「大学の教職員はさらに厳しさを実感していると思う」と述べ、今後は他省庁も巻き込んで国からの運営費交付金の増額を目指したいとの考えを示した。

 国大協を巡っては昨年6月、国立大学の基盤的経費である国からの運営費交付金が上がらない中で、物価高騰や人件費上昇などが大学の経営を圧迫しているとして、永田会長が「もう限界」との声明を発表した。こうした動きを踏まえて、文部科学省は来年度予算の概算要求で運営費交付金の3%増額を求めたが、当初予算案では3年連続で1兆784億円に据え置かれている。

 こうした経緯を受けて、総会では出席した各大学の学長らが大学の厳しい経営状況に言及した。電気通信大学の田野俊一学長は「インフレが蓄積され、人事院勧告に伴う人件費増なども蓄積されているにもかかわらず、来年度予算案では全く運営費交付金が上がらない状況だ。国のポリシーがこれでいいのかと、国大協はしっかり発信すべきだ」と訴えた。

 また、今年度の国立大学病院の赤字幅が昨年度より増加して、全体で200億円を超えている状況を巡っても意見が相次ぎ、「医学部の研究教育を支える人たちの自己犠牲で成り立っている状況が、耐え切れなくなっている」「最先端医療を提供するための医療機器の更新も難しい状況が生まれている」などの声が上がった。

 総会後に記者会見した永田会長は、国立大学運営費交付金が据え置きになったことについて、「物価上昇や消費税、人件費分などを同じ額で賄っている状況で、増えてしかるべきだった。残念だ」と述べた。また、昨年6月の声明からの半年間の状況については、「苦しさは変わらないが、各大学で人事院勧告に沿うかどうかの議論をしており、教職員は苦しさをより実感していると思う」と、さらに厳しさを増しているとの考えを示した。

 今後の運営費交付金の増額に向けた取り組みとしては、「国民はもちろん、多くのステークホルダーを味方につけないといけない。地方創生は総務省、国立病院は厚労省も大きく関係しており、新しい戦術として他の行政府にも広く働き掛ける必要があると考えている」と述べ、予算獲得に向けた活動の幅を広げたいとの思いを示した。

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